昨日の記事で主役を張って頂いた菊本師匠だが、以下のような続報が出ていた。今日の報道である。
武豊親戚の名で馬券代金をだまし取った男3度目逮捕(日刊スポーツ)
初犯での検挙がなんと1994年であった。菊本御大は当時47歳だ。芸人としてはまだ中堅といったところにありながら、人々を魅了する話術を既に身につけていたのである。もはや天賦の才に近い。

本当に一族郎党だった
そして、何よりも度肝を抜かれたことには、あえて語弊を誘うような述べ方をするが、本当に武一族の関係者であったことである。私を不採用とした日刊スポーツによれば、武宏平元調教師のご兄弟が経営していた牧場に勤務していたことがあるとのことだが、それはもう、宏平氏の長兄である勇氏が代表を務めていた、武牧場に他ならない。現在も牧場は存続しているが、勇氏が何者かに撲殺されたことでも知られる、あの武牧場だ。菊本師はそこで働いていたのである。
もちろん、勇代表の死去は2003年で、菊本名人はとうに牧場を離れて詐欺師として活動していた頃の話だから、この未解決事件には関与していないだろうが、それにしても、本当に武宏平氏を知りえる立場にいたことには驚いた。もしかしたら宏平氏本人と会った経験も多くあり、優れた形態模写が出来るようになるまでその一挙手一投足を勉強したのかもしれない。いや、そうでなくとも、全く同じ血統構成を持つ兄の下で働いていたのである。千原兄弟や中川家だって、本質的には非常に似ている部分があるのだから、兄の真似をすれば、即ち弟の真似をすることにつながるはずだ。いずれにせよ、彼の修行の場が閉鎖的な北の大地に根付いた広大な牧場であったことに、感銘を禁じえない。
ついでに、巧みな口技に関して
菊本師範の手腕がいかに素晴らしいのかを示す証左として、詐取したお金が、あくまでも勝馬投票券を買うための資金だった、ということが挙げられる。
馬券代として掠め取る利点はいくつかある。まず、当たれば自分の懐に賭け金以上の金額が戻ってくる、と儲けを見込んで大きな額を渡してくる愚か者が現れる可能性があることだ。そして何より最大の利点は、このように騙し取られる金額をカモ自身が決めてくれるということで、そこには少なからず、自分の意思でお金を渡した、という気持ちが出現するのである。言われるがままに払わされたわけではない。あくまで自分から「よろしう頼んます」等と言って託した、という印象付けが出来るのだ。通報までの時間を稼げるし、カモによっては、「バカなことをしてもうた、恥ずかしぅてどこへもよう行けへん」と泣き寝入りしてくれるかもしれない。
馬券代を騙し取る、という行為が抱える最大の弱点は、「ほな、自分で買いに行くさかい、情報だけ教えてや、おいくら?」と言われることである。こういうキズネタについての情報料相場など、素人が知る由もない。「10万円!?アホかおたく」、「五百円!?それはあきませんわ、信用できひん」。とにもかくにも、妥当な金額を定めるのには苦労する。カモによってモノの価値観もそれぞれ違うから、一概に、お金持ちには高い情報料をふっかけておけば大丈夫、というわけでもない。
情報料から馬券代に話を飛躍させるのは容易なことではない。一体どのような物言いで口説き落としていたのか、情報が出れば出るほどに、ますます気になるのである。
生きて日の目を見られるか
北の大地から飛び出して全国を行脚、東に西にと大興行を続け、あえなくお縄を頂戴してしまった菊本輝昭さん。その日を召したかのような光の軍略を、またいつの日にか魅せていただきたい。

去年の暮れに私の店にも来ました。2,000円ほど軽く飲み食いしてましたが
馬券は自分で買う主義だとつっぱねるとあっさり帰ってくれました。
話のもって行き方は本当に上手でしたが騙されないでよかった。