十二年に一度の午年がやってきた。年男となるJRA最高齢騎手の柴田善臣氏(59歳/東/フリー)は年甲斐にもなく、若しくは年相応に元気いっぱいである。昨年は一年のほぼ三分の二を加療の為に棒に振り、一月は馬に乗るどころか日常生活も覚束ないような状態であったようだが、なんとか乗り越えて秋からの数か月で3勝。いよいよ満を持してのフル回転といった態勢で2026年の新春を迎えたものと思われる。

早速、還暦の前祝とばかりに金杯では身勝手な僚馬、ピースワンデュックへの騎乗を依頼され、後輩騎手たちを引き連れて、まるで馬揃えかのような落ち着いた逃げを披露した柴田善騎手だが、一月開催での勝ち星そのものは2021年を最後に全く挙げられていないのだった。
しかし、そこは年男。そしてメンテナンス後の良化した肉体も手伝って、今年は一味違った。2026年1月12日(月・祝)、三日間開催の最終日。まずは午前中の第三競走で、16頭立ての七番人気馬を、ハイペースについて行けなかったことをむしろ利として2着にまで押し上げて、確かな存在感を示した。

このレースでは上掲の通り、最後の直線走路で右にヨレて他馬に迷惑をかけたことと、修正の為に右鞭を連打したことが咎められており、手放しで褒められるような状況ではなかったが、本番は午後、第九競走の成田特別であった。16頭立ての八番人気、テン乗りの追い込み馬、ダカラフェスティヴ(牝4歳/父ミッキーグローリー/東・奥平厩舎)に騎乗した柴田善騎手は、中山ダート2400mという、あまり組まれないコース条件もなんのその、大ベテランらしい落ち着いた立ち回りで、見事、最も先にゴール板を通過していったのである。
詳しく見ていこう。まず何は無くともダカラフェスティヴである。追い込みの牝馬というと、歴代の名牝を彷彿とさせるが、ダート戦というのが一風変わっている。牝馬らしい軽くて鮮烈な切れ味と、乾き切った冬のダートコース走破に必須である野太い力強さは、どうにもしっくり噛み合わないが、同馬はここまで砂の道一筋。さらに初勝利以降は一貫して後方待機からの差し追い込み戦法で勝負している。潔い程に一途一徹な、頑固乙女であった。
前走の1勝クラスもダートの長距離を後方から攻めて見事1着となっており、つまり柴田善騎手に乗り替わった本競走が、2勝クラスへの初挑戦だった。
ちなみに、1勝クラスを勝ちあがらせた騎手の方は、本競走では西から遠征してきた一番人気馬へ騎乗していた。
さて、発馬となったが、いつも通り行き脚のつかないダカラフェスティヴはどんどん後方に下がる。ほどなく最後方まで下がり、そのままスタンド前を通過。一角、二角と全体のペースは上がらず淀み気味の中、柴田善騎手は慌てず騒がず、淡々と最後方を進む。


向こう正面の中ほどあたりで、そろそろと、柴田善騎手の駆るダカラフェスティヴが外目に振れつつ進出を開始。徐々に追い動作が激しくなり、三角からは最早ロングスパートといった形で、中団外まで位置を押し上げる。四角では集団の最も外を回らされるかたちとなるも、一切その不利を感じさせない手綱さばきで、直線では牛蒡抜きに近い圧巻の動きを魅せ内側の馬々を完封、ダカラフェスティヴに連勝をもたらしたのだった。


柴田善騎手が年明けからこれほど早く勝利を挙げるのは、前述の通り相当久しぶりのことである。何しろ正確には2021年は第三週目での初勝利であったから、本当は五年ぶりどころの騒ぎではないのだ。2021年は年間20勝を達成した。昨年3勝の鬱憤が年男の輝きも手伝って強かに晴らされるのか、注目だ。ちなみに、2018年は1月13日に初勝利を挙げているが、この年は僅か7勝に終わっている。果たして。
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