柴田善臣騎手、五週連続の勝利で年間勝率を一割台に戻す


緊急事態が続く世間の停滞などどこ吹く風、復活の好調を維持して久しいJRA最高齢騎手の柴田善臣氏(54歳/東/フリー)がまた勝った。これで地方競馬を含めると今年13勝。ここまでの年間勝率も一割台に乗せ、このまま好調を維持すれば、2011年に83勝して以来、実に10年ぶりの勝率一割達成となる。そうなれば、全盛期に迫る、とまでは述べがたいものの、少なくとも通算成績と遜色ない程には成績が回復してきたということを、内外に広く強く印象付けることとなり、騎乗馬の数も質も充実一途の好循環、益々の活躍に繋がることであろう。

JRAの公式動画より。決勝線。

客はいなくとも風は駆ける。初勝利の新風は?

新緑を大風が激しく揺するという少し不安定な大気に翻弄されて、2021年の五月晴れは、目まぐるしく流転する濃淡様々な雲模様を伴い、疫病不安に喘ぐ人々の心をさらにふらつかせる。そんな5月8日の土曜日に、今日も今日とて東京競馬場では無観客開催があった。人気のないフードコートが、ただただそこにある、不可思議な昼休憩時間を経た後の第5Rは、未勝利クラスの芝1600m戦であった。

昭和の時代から馬に乗って金を稼ぎ、21世紀初頭には年間145勝を挙げたこともある古豪、柴田善騎手は、七枠13番のヴルカーノ(牡3歳/父スピルバーグ/稲垣厩舎)に跨り、発走を待ちわびていた。ヴルカーノは、これまでに柴田善騎手を二回乗せ、それぞれ人気以上の走りを見せて4着、3着と善戦していたものの、デビューから既に八戦、未だ勝ち星を挙げていないのだった。早春の頃には、いよいよお鉢が、との期待が集まっての二番人気、しかしそれも半馬身の差で、若手騎手の全力追いむなしく人気通りの2着へと落ち着いてしまった。

クラシックシーズンの本番を迎えたこの日、今度こそ快挙があるべきと、諦めきれぬ馬券師達がお金をかき集めての三番人気に推されたヴルカーノと、その期待をひしひしと感じた大ベテラン、柴田善騎手に、刻一刻と発馬の瞬間が迫った。

広大な芝にあって、泥臭い走り。

抜群とまではいかないものの、いいスタートであった。外枠ながらそのまま先団にすんなりと取り付いた柴田善騎手とヴルカーノは、まるでダートレースであるかのように、先頭を走る馬のすぐ脇を進んでいく。

JRAの公式動画より。発馬の瞬間。画面左、橙色の帽子と水色の上着を身に着けているのが柴田善騎手。画角の関係で強調され過ぎている感があるが、過半数の他馬よりも前にいる。

4コーナーでも持ったままながら、ピタリと逃げ馬の斜め後ろ。並びかける勢いですらあった。これが直線の短い地方競馬のダート戦であれば確勝級のパフォーマンスであったろうが、ここは東京競馬場。この先に500mもの直線が待ち受けているのであるから、不安に慄く馬券師も少なくなかったのではないか。

JRAの公式動画より。4コーナーの終わり。画面一番右の逃げ馬に並びかけるヴルカーノと、ほとんど追っていない柴田善騎手。

しかし、柴田善騎手は余裕であった。氏が直線で追い出し始めると、ヴルカーノは逃げ馬と200m程のマッチレースを繰り広げたものの、坂を上る頃には完全に優勢、程なく捻じ伏せ、追い込んでくる他馬には影をも踏ませずに颯爽とゴール板へ飛び込んで見せたのだった。テン良し中良し終い良し、のまさしく王道競馬であった。

横綱相撲には、それなりのカラクリが。

本走のような先行抜け出しは、図抜けた実力を勝ち馬に感じさせるような説得力があるが、ヴルカーノに明らかな成長があったにしても、このパフォーマンスが披露された背景には、少なからず外的要因も絡んでいることだろう。このレース、前半の800mが48.1秒、後半の同距離が46秒と、明らかなスローペース競馬だったのである。良馬場とはいえ未勝利クラスであることを考慮すれば、48.1秒という数字はそこまで遅くはないが、後半が2秒以上も速いとなると、如何に逃げ馬が余力を残しながら立ち回れていたのかが察せられる。事実、この逃げ馬は最終的に馬券圏内まで逃げ粘っていたのだ。

楽逃げに持ち込んでいたその人馬を、ヴルカーノと柴田善騎手は追い立てるでも追い落とすでもなく、ただ外からじっと見ていた。そしてそのさらに外には一頭もついていなかったのだから、ヴルカーノは他馬からプレッシャーをかけられることなく、ただ逃げ馬の動向を注視し、その余力を見定めることに集中出来た。楽な走行ペースと、邪魔する他馬のいない環境が、彼の能力を存分に発揮させるのに一役買ったことは疑いようがない。

いずれにせよ、柴田善騎手の復調ぶりは益々さかんで、通算勝率の.107に到達することも、そう難しくはなさそうである。今後も要注目だ。

JRAホームページより。

労働階級からの解放を志し、収入のアテもないのに突然脱サラ。後先考えないその姿勢に後悔しきり。

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