元・最年少女子レーサー生田波美音選手、2勝目は早め。


競艇とは、真に気持ちのスポーツなのだろう。今年の初勝利まで実に五ヶ月近く要してしまった生田波美音選手(18歳/B1/東京/124期)が、その次節には早くも2勝目を挙げたのである。

舞台はトリッキー、江戸川!

2021年6月10日。ボートレース江戸川に於いては、G3オールレディース 江戸川女王決定戦KIRINCUPが開催の五日目を迎えていた。江戸川といえば、世界で唯一の、河川をそのまま使用して運営されている競艇場であり、それ故に国内屈指の荒れ水面でよく知られている。波が荒く高いとなると、軽量の選手は翻弄されてすぐどこかに飛ばされてしまうのではないか、と推測する人々の間でいつしか、「江戸川といえば、重い選手の方が波を制することになるので、体重があればある程に活躍できる」、という伝承が生まれたのだった。

高身長ゆえに体重苦を抱える生田選手は、男よりも軽い女子連中にあって、50kg台へ登ったり降りたり、御世辞にも女子レーサーの人並みとはいえぬ重さである。しかし、だからこそ、船券師たちは今節に期待してやまないのだった。

165cm49kg、生田選手と江戸川

とはいえ、実際の生田選手は、所属する東京支部のお膝元、つまり地元水面である筈の江戸川こと中川とは、あまり相性が良いとはいえぬ成績を辿ってきた。デビューした年の11月に初めて中川を航行し、舟券絡みは3着が一回あっただけだ。この当時はまだ水神祭、つまり初勝利も経験していない17歳の処女だったので致し方あるまいが、翌年の成績も酷いものだったのだから擁護をしにくい。何しろ、追配含めて十四回走った結果、三連対はゼロだったのだ。

艇国データバンクより。

一方、同じ地元東京水面となる平和島では、昨年冬に1号艇で順当に勝った他、2着三回3着七回と、そこそこの実績を残している。多摩川に至っては嬉しい初勝利の水神祭を敢行した後、さらにもう1勝し、その他2着3着を共に三回ずつ記録している。

二枚とも、艇国データバンクより。

このように実績だけ辿ってみても、生田選手が決して江戸川巧者ではないということがわかる。

さて今節だが…

しかし、今節はなかなか調子が良い。何しろ五日目の本日を迎えるまでに七回走って2着一回3着三回と、これまで中川をグルグルしていた選手とは別人のごとき活躍を見せていたのだ。これも、スランプのなかを苦しんで苦しんで、引っくり返って飛び出して落っこちて、ようやく勝ちを手に入れたという経験が、自信と自負に繋がった結果なのだろう。

そして五日目の今日であった。二回走りの一走目を2号艇2コースから無難に2着としてからの二走目、第8Rである。

55歳のB2級、誰がその肩を叩けるというのか……

BOATRACEオフィシャルウェブサイトより。

同じ東京支部の大先輩が映えある1号艇という、年功序列のシキタリが薄れに薄れた令和にあっては、かえって非常に挑戦的なラインナップであった。 5号艇に実力たしかなA1選手が控えており、その存在が、忖度も八百屋さんも女子戦には居ないのだ、ということを証明できるのかどうか、注目を集めて然るべき一戦である。

波乱極まる河川水面、最後まで何が起こるか誰にもわからぬ江戸川の、実のところは中川の、神も鬼も住まうべき水面に於いて、始まって見れば呆気なく、一周する頃には勝者が定まっていた。もちろん生田選手である。

好ダッシュ好展開、ノー忖度。

BOATRACEBBより。

上掲の通り、トップスタートを決めた生田選手の3号艇。1号艇との差は僅か0.01秒に過ぎないが、2号艇が大きく凹んだことが1号艇の大ベテランを不利な態勢に追い込んだ。1マークで壁役を務めるべき黒服が不在となるため、3号艇生田選手の捲り旋回に、ベテランは内から負けじと張り通して戦わねばならないからである。

BOATRACEBBより。一周目のバックストレッチ。1号艇の舳先が3号艇にかかりそうではあったが…

捲りきったか、それとも1号艇が残したか。バックストレッチの攻防は熱いものがあったがしかし、こうした場合に生田選手は先輩に対して一切の遠慮をしないのは既に周知のことだろう。

BOATRACEBBより。一周目2マーク。バックストレッチで生田選手に内を塞がれた為、外に出して差しを狙う純白のベテランB2だが、生田選手は無情な握りマイで差を広げる。

当然の如く今回も全く譲らず、2マーク旋回でロートルに引導を渡すかのような突き放した走りを見せ、そのまま勝利をもぎとったのだった。

これからは、ポンポンポポンと小気味良く勝つのか?

それにしても、今年の2勝目がこれほど早いとは、生田選手はなかなかに予想屋泣かせの存在である。これが江戸川での初勝利でもあるが、スランプを脱し、気持ちが乗っているからこその好スタート好旋回によりもぎとった勝ち星と判断したい。昨年冬から今春にかけて、A級昇格は夢のまた夢、といった烙印すら押されて然るべき走りであった生田選手。すぐにまた勝つことがあれば、まだまだ見限れないばかりか、大いに羽ばたく可能性すら感じさせよう。


労働階級からの解放を志し、収入のアテもないのに突然脱サラ。後先考えないその姿勢に後悔しきり。

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