夏の福島である。中央競馬の地方開催、というNARの方々がしょんぼりしそうな定義づけをされた季節、夏競馬の時期がやってきた。我らがJRA最年長騎手、柴田善臣氏(54歳/東/フリー)は、初週に続いて福島競馬場で騎乗し、無事に7月の初勝利を挙げた。

曇天に似合わぬ豪快な相棒
2021年7月10日。梅雨空と湿った馬場という凡そ夏本番とは述べがたいコンディションの福島競馬場で、全12Rがつつがなく開催された。柴田善騎手は5つの乗鞍に恵まれ、このうちの第10R、「いわき特別」で一番人気の支持に応えることとなったたわけだが、これについて詳しく見ていきたい。
いわき特別は、3歳と古馬が入り混じる2勝クラスのレースで、福島のダートコースを一周する1700m戦である。世代間実力差をどう考えるかによって、馬券選択が大きく変化するところであるが、今回柴田善騎手が手綱をとったのは、3歳のメイショウムラクモ(牡/父ネオユニヴァース/和田厩舎)であった。2月末に8馬身差の圧勝を見せつけてくれた彼であり、今回は休み明けの出走となる。
なんとこれが単勝1.8倍、断然の一番人気馬であった。前走での勝ちっぷりが豪快だったとはいえ、当時は同い年の馬相手に過ぎなかったのだが、歴戦の古馬を前にしてもこの評価となると、つまり今年の3歳世代は、古馬の条件戦においては、互角、もしくは個体によっては圧倒的に強い、と多くの馬券師が考え至った、ということだ。
3歳1勝クラスの圧勝馬が、古馬2勝クラスに立ち向かう
そして、その太鼓判はやはり堅実であった。ゲートが開くと、メイショウムラクモと柴田善騎手は、七枠12番という外目の発馬であったにも拘わらず、難なく先団に取り付く。一角で大外を回らされるのは致し方ないが、そのまま二角、そして向こう正面へ進むにあたってグイグイと前へと迫り、中盤では逃げ馬にプレッシャーをかける二、三番手あたりを元気一杯に追走。



3歳同士で圧勝した当時は、ここで先頭に躍り出て、そのまま逃げ切って見せたのだが、流石に馬が大人になったのか、番手の位置を維持して三、四角へ向かう。

早々に逃げ潰れた馬を尻目に、メイショウムラクモとその内側を先行していた馬は、並んで四角を回る。もちろん内が有利で僅かに前だが、余裕があるのはどちらの馬か、それは素人目にも瞭然であった。直線に入ると、鞭を振るってガムシャラに追い立てる内側馬の騎手をよそに、柴田善騎手あわてず騒がず、ハミだけ弄って進出を開始する。


そしてそのまま難なく、何もなく、ただ突き放してゴール。結局2着馬とは七馬身差であった。メイショウムラクモは、古馬を相手にしたのにも関わらず、同世代馬対決とほぼ同じようなパフォーマンスを見せてくれたのだった。ほぼ同じ、とは、着差もさることながら、今回も勝った当時と同様、一度たりとも鞭を打たれなかったという点でも共通しているということで、こりゃまた凄い。
癖馬の経験実績が豊富にある柴田善騎手ならば。
道中行きたがる癖があるのが心配ではあるが、無事に気分よく進出できた時の末脚は恐るべきものがあるから、無暗に抑えるのも考えもので、御機嫌とりが難しい馬ではあるかもしれない。しかし、それを御せるのが大ベテラン、柴田善臣騎手なのだ。
農林水産大臣って、絆創膏の赤城さんが懐かしいな
さて、柴田善騎手といえば、先日、なんだか仰々しいのかそうでもないのか、価値のよくわからない受賞があったことは記憶に新しい。


昨年の第一回とやらで、武豊騎手と的場文男騎手が受賞しているので、中央競馬所属騎手としては二人目の受賞となる。平成の天才と称えられた伝説的名騎手に次いでの受賞とは名誉なことだろうが、それよりも、ご祝儀的に騎乗馬が増えていく可能性の方を貴びたい。益々の活躍に期待だ。
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