二桁人気もなんのその。柴田善臣騎手逃げ切り勝ち。


約20年ぶりとなる記録更新や、連日の重賞勝利によって取材が増え、殊更に身辺が騒がしいJRA最年長騎手の柴田善臣氏(55歳/東/フリー)。興奮冷めやらぬその次週にも、13レースもの乗り鞍に恵まれ、一息つく間もないといったところの同騎手だが、この中からキッチリ1頭勝たせて見せ、ファンを躍り狂わせてくれたのだから頼もしい。

JRAの公式動画より。決勝線。

耐え難きを……………たえ、忍び難きを…忍び、

2021年8月15日。玉音放送から76年の時を経た日本列島。平和を謳歌する島国にあって、最も長い芝の直線を擁する新潟競馬場で、今日も競馬が行われていた。その第8Rは3歳上1勝クラスの一般競走で、ダートの1200m戦であった。ダートといっても発走地点は芝で、例によって二角の外にゲートが置かれる形、つまり外目の枠へ配されるに従って、スピードが出やすい芝目の部分を多く走れる様になるという寸法だ。

我らが柴田善騎手と、その下で足を動かすことになるトリプルシックス(牝4/父ヴィクトワールピサ/古賀史厩舎)は、二枠3番と、内目の枠を引かされていた。トリプルシックスは、前走でも柴田善騎手が手綱を取り、七番人気を大きく裏切る13着に敗れていた。見栄えが良すぎるのかなんなのか、そもそもが過大評価に推されがちな牝馬であり、前々走まで実に六回連続で人気よりも着順が下回るという体たらくであり、勝ち馬から1.3秒差の13着というのも、そこまで意外な数字ではない。

それが今回は15頭中の十番人気である。いよいよもって、その見た目には騙されまいぞ、という馬券師たちの鋭い血眼を感じさせる評価だ。期待され続けながらも、去年の11月以来、ついに一度たりとて馬券に絡まなかったのだから、この低評価は遅きに失したとさえいえよう。

その時不思議なことが起こった

好発馬であった。芝に覆われた部分の少ない内枠ながら、トリプルシックスはそつなく前へ行く。進む、走る、どんどんと。程なく先手を奪いきり、逃げの態勢だ。

JRAの公式動画より。芝とダートの境目。画面中央下部、今まさに砂へ前足が入らんとしているのがトリプルシックス。既に一番手を取り切る勢い。

そして、そのままレースは終わった。最後はバテて後続に差を詰められたとはいえ、2馬身以上の差を付けて、堂々たる逃げ切りであった。今まで4着→5着→9着→9着→11着→13着と、走れば走る程に着順を落とし続けていた馬と同じ彼女とは思えぬ、豪快極まる走りっぷりであった。

4枚とも、JRAの公式動画より。3-4角の間。先頭を行くのがトリプルシックスと柴田善騎手。
4角。特に急かすこともないのに、差を広げだすトリプルシックス。
最後の直線。差はどんどん広がっていく。
残り200m標識付近。力強い逃げっぷりである。

砂の、女の、カブラヤオーが爆誕するか

前半の600mを33.7秒で駆気抜けたのに対して、後半の同じ距離には37.1秒も要したという、典型的なハイペース競馬であったが、柴田善騎手に追随して先行策をとった他馬が13着、14着と悉く大敗していることから、トリプルシックスが如何に電撃戦に強いかが容易に察せられる。自らオーバーペースに巻き込んで他を沈めるとは、まさしくスズメバチを撃退する為に集団で高温化するミツバチたちの如き立ち居振る舞いであった。

いずれにせよ、単勝33.1倍牝馬による突然の激走により、馬連はもちろん万馬券、三連単も二十九万馬券と、柴田善騎手を信じたファンのみがお盆休みの大盤振る舞いを享受することとなった。老いてますます充実した騎乗ぶりを見せてくれる昨今、これからは騎手人気にも警戒せねばなるまいか。


労働階級からの解放を志し、収入のアテもないのに突然脱サラ。後先考えないその姿勢に後悔しきり。

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