幼稚園や小学校などに忍び込み、上履きを盗んでいた男が捕まった。4度目の逮捕らしいが、拘留中の再逮捕等を含むものと思われる。他の新聞報道では時系列に違和感があるものも多いが、この記事によれば、それほどベテランの窃盗犯ではないようだ。
小学校で上履き盗んだ疑いで逮捕 家宅捜索で300足(朝日新聞)
大いなる旅路
驚くべきは盗まれた上履きの数などではない。場所である。男は千葉県の在住で、はじめに逮捕したのも松戸署だが、上履きは鹿児島や大阪、静岡など実に6都府県の学校施設から盗まれており、その行動範囲の広大さに恐れ入るばかりだ。寅さんもびっくりの旅っぷりである。
あなたの金は、どこから?
無職だという。38歳であるらしい。まだ年金など出ていないし、一生貰えないであろう世代である。いったい旅費はどうしていたのだろうか。自家用車で移動していたらしいから、宿は取らなくていいのかもしれないが、それにしたって衣服や食料、ガソリン代はどこから捻出していたのか。
もしかしたら支援者がいるのかもしれない。日本靴軍や靴マル派といった組織が、秘密結社の如く暗躍しているのだとしたらどうだろう。どうだろうってことはないが。
男は尖兵であった。上役に言われるがまま、何に使うのかも知らされぬままに、延べ300足超の上履きをただただ盗み、なるべく足が付かないように日本全国を飛び回りながら、ひたすら盗み続け、自宅に溜め込んでいたのかもしれない。そして、上役からの次なる指示を待っていたら、知らぬ間に尻尾切りに遭っていたのだ。悲しき鉄砲玉である。
しかし、男は容疑を否認しているという。それもその筈だ。もし結社のことを、靴命的共産主義者同盟全国委員会のことを、もしくは日本靴命的共産主義者同盟靴命的マル靴主義派の存在を、外部、こともあろうに警察的公権力に漏らしてしまったら、シャバへ出た瞬間に消されてしまうに違いないからである。
文系一直線だった私には、いったい上履きをどのように加工すればVXガスを精製できるのかはわからないが、きっと出来るのであり、だからこそ上履きは盗まれてはならないのだ。
冗談をいうのも疲れるので、話を変える。
あれれ~、あの超高性能なキック力増強シューズがなくなってるよ?
最初の逮捕は、松戸市の幼稚園で園児の上履きを6足盗んだという容疑であった。よくよく調べると全国津々浦々から300足あったわけだが、ここで少し、被害者の気持ちをおもんぱかってみたいと思う。
6足の持ち主、6人の園児たちは、これをどう捉えたのだろう。昨日履いたはずの上履きが、今日、ない。もじもじするしかないではないか。
園児を見て、幼稚園教諭は言うだろう。「あれー?上履きないねー、昨日持って帰ってなぁい?」。まず真っ先に疑われるのは園児だ。なぜなら子供ってやつはまだバカだからである。園児はもじもじする。すると、活発なもう一人の子が言う。というよりも吼える。「なーい!せんせ、なーい!せんせ!せんせ!」。そして友達に叩かれて泣く。そこで教諭は初めて気が付くのだ。
昨日、上履きを持って帰った園児が6人もいる。
こうして初動捜査はどんどん遅れていくのだった。
あの千葉県警が、警視庁や大阪府警とコラボ!お次は?
警察側では現在、発見された300足超のうち、104足について裏付けが済んでおり、窃盗罪の立件が可能な状況まで漕ぎ着けているという。日本の警察力はなかなかのものだから、残る200足程度についても時間の問題だ。男の自供などなくとも、警察は上履きの足取りを辿ることができる。威信をかけた捜査が続く。日本の警察は、上履き窃盗犯にも屈しません。
ロッチ中岡も驚きの変態性、と言いたいのか?
上掲の記事に限らず、ほとんどの報道が、盗まれた上履きの男女比を記して結びに変えている。6:4で女子の方が多いです、とこれみよがしに教えてくれるのだが、いったいそれが何だというのだ。「性的な変態なんですよこの男は。だから女子の方が多いでしょ?」と言いたいのか、それとも「男の動機は不明で、女子の上履きは半分強ほどしかなく、性的な興味ではないことは明らかです」と言いたいのか。
どちらにせよ、どうでも良いじゃないかそんなことは、と思うのだ。男が口を割るか、もしくは男の過去を知る友人や親族などが現れて、動機につながるようなエピソードをぶち上げない限り、知る由もないし、知ったところで我々庶民は、「へぇ、変わった人もいるもんだねぇ」と言うだけである。まるで寅さんの母親のように。
なんでもかんでも性的なものに結び付けないで頂きたい。マスメディアは、変態じみた犯行を報道する際に必ず幼児性愛の趣向を盛り込みたがるが、そうとも限らないではないか。
性的ではないとすると、まず思いつくのは収集癖だ。
とにかく小さめな室内履きを集めるのが趣味なだけかもしれない。コレクターだ。昆虫収集と一緒である。「なぜ昆虫はタダで捕獲できるのに、上履きは金を払って買わなければならないのだ。生命ある昆虫の方が偉いはずだ。それが無料なのに、物言わぬ室内履きが有料。これには納得できない。だから盗んだのだ。」等という自分なりの正義を背負っている可能性もある。
もっと推し量れば、実は大きい上履きや体育館履きだって欲しかったのかもしれない。「サイズが大きくなると、デザインも多様化してくるし、本当は中学校以上のやつも欲しいんだけど、さすがに生徒たちも体が大きくなってるから、腕っ節も強そうだし、もし見つかったら逃げ切れる自身がなくてね。だからとりあえず、まずは小さいやつから全国制覇しようって思ってて。もう40近いのに、まだまだ全然集まりきらないんですけどね(苦笑)」。
コレクターとして大成していれば、タモリ倶楽部への出演だって夢ではなかった。
「上履きの汚れは千差万別なんですね。履く人の体重や運動量、歩き方の癖によって磨り減る箇所も変わって来るんです。例えばここ、かかとのゴムが剥がれてきてるでしょ」。タモリがサングラスをずらす。「本当だ」。「普通はつま先のゴムが最初に外れちゃうんですよ、履く時にトントンするから」、「そうですよね、普通はね」と妙にやる気のある水道橋博士が相槌を打つ。「でもこの人は違いますよね、つま先部分は綺麗で、かかとだけズルズルになっている。これは…」、「先生、これはなんでなんですか?」。水道橋博士の素人回しは時として少し下手糞である。「あはい、これは、ですね、授業中にかかとを机の脚などに押し付ける癖みたいなのがあったんでしょうね」。「あーなるほどー」。「そうやって見ていくと、上履きを見ていくだけで、その人の生活態度が見えてきますから、性格や嗜好までもわかってきますよね」等と、300足の上履きに囲まれた男たちは盛り上がる。バーター出演の若い女は少し置いていかれる。そんな感じの幸せだって有り得た。
こんな記事を書かせるのは誰だ?俺たちか
いずれにせよ、動機を安易に性的な変態嗜好方面へと誘導するのは良くない。偏見に過ぎる。しかし、これを記事の最後に持ってくるということは、「ところで読者の皆は、ぶっちゃけこいつが変態かどうか、気になってんでしょ?…じ、つ、は、6:4でーす」と言いたいわけだから、結局は、知りたがっている我々庶民がいけない。変態かどうかなんてどうでもいいではないか。
よしいくぞう、という名前と、一番のヒット曲。実は凄いリンクしてるのね
この事件の肝は、なんの罪もない園児や児童が、上履きの紛失について担任教諭に疑われて、悲しくて悔して、泣きたくなる夜を過ごす思いをしたということだ。子供によってはその親にまで、「あんた上履きは!?」と問い詰められたかもしれず、「そばにいて、少しでも話を聞いて」と心の中で叫ぶが、震える唇、とめどなく涙が頬を伝うのみだ。しかもそれが300人以上にものぼっていたという、実に陰惨な事件である。まだ6都府県のみ。雪国まで追いかけていくべきだろう。