【結果考察】第24回NHKマイルカップ【2019】


G1に昇格してから20年以上の月日が経ち、未だに風格が感じられない掲題のレースが、無事に終わった。ベストマイラーを決めるでもなく、3歳クラシックの一戦でもない、非常に中途半端なその立場と、かつてNHK杯といえば、トライアルレースの一つに過ぎなかったという事実が、G1格としての偉大さ、荘厳さ、立派さを殺いでいるのだろう。

もう不動明王とは呼ばせない

勝利したのは八枠17番のアドマイヤマーズ。2歳王者として恥ずべき戦いはできない。しかも王者決定戦の当時と同距離とあっては、負けるわけにもいかなかったろう。

当日は、令和の女傑を志す小娘に人気を奪われ、4.3倍の二番人気に甘んじたが、「直線で他馬と並ぶ展開になれば今まで1度も負けたことがない 」と調教師が豪語していた通り、一頭分距離を空けて併走することになった女傑を競り落とした。その勢いのまま先頭へと体半分抜け出すと、追いすがる他馬にも一切前を譲らなかった。調教師の発言は危うかったものの、持ち前の「勝負根性が生きて」きたのは間違いない。「ベストの条件」での王者再臨となった。

現実に厳しく、目標は高く

さて、このレースは単勝二番人気の馬が勝利を収めながらにして、馬連が172倍の大荒れとなっている。その立役者が同じく八枠の大外18番、ケイデンスコールであった。

後ろから行く馬にとって、直線が長く広い東京は大歓迎である。大外から直線だけで先頭まで大接近。並べば抜かせない1着馬までは届かなかったが、十四番人気と、殆どファンから相手にされていなかった鬱憤を晴らすに足る、見事な末脚であった。

調教師は、G3で4着に来ても納得せず、「特に目立った脚は使えなかった。もうひと伸び欲しかった。」と苦言を呈する程に目標を高く持っていた。実績はないが、本馬の真価、秘められた実力を信頼しており、またその分だけ、現状に不服であったのだろう。今回のG1で、本当の力を見ることができたのだろうか。それともこの連対は、「重賞を勝っていいイメージを持っているジョッキー」と「結果の出ている左回り」という、ちょっとした勝因の積み重ねによるものに過ぎないのだろうか。いずれにせよ、今後は注目される立場として生まれ変わる。次走が気になるところだ。

五文字でも意外と叫びにくい馬名(字余り)

そして、3着には五枠10番のカテドラルが入り、三連単は、二番人気→十四番人気→七番人気の4106.8倍というなかなか御目出度い馬券となった。

2着馬が障壁もなく芝目も綺麗な大外を快適に走って前まで迫ったのに対し、カテドラルは馬場の真ん中で他馬を交わしながら、荒れ馬場を力強く伸びてきた。この差は大きいだろう。もし二頭の位置が逆であったなら、着順も逆、もしくは、2着馬は馬群に沈んでいた可能性すら大きいのではないか。そう思い描きたくなるほどに、タフな3着であった。

JRAの公式HPより。

なにしろ2、3着はハナ差もハナ差、とんでもない僅差なのである。まさに「展開ひとつ」でどうにかなりそうな実力を持っていることが証明された。なお、「遊んでいた」のかどうかは定かではないが、ゲートは出負けしている。

よろける乙女を支えきれず

4着には、不利を受けて繰り上がりダノンチェイサーが入った。距離について「悪くないと思う」と評した調教師と、「ベストだと思う」と太鼓判を押した助手。400m標識の手前で妨害を受けてからも、めげずに最後まで伸びてきたその実力を考えると、助手の判断が正しかったと見るべきか。三番人気には応えられなかったが、不利がなければさらに前へ出ていた可能性もある。

JRAのパトロールビデオより。画面中央左に塊ができているが、その中心、黒い帽子の騎手を背負ったのがダノンチェイサー。そのすぐ内側、青い帽子の騎手が乗っているのがグランアレグリア。

女傑とは片腹痛い

桜花賞を圧勝したグランアレグリアは、ダントツの一番人気からまさかの5着。それも、4着入線後に斜行の不手際で降着となったものであり、結果も内容も散々であった。桜花賞でも直線で右にヨレる雰囲気があったが、牡馬と混ざってもその傾向に改善は見られなかった。

牝馬で入着とくれば普通ならば健闘したと褒め称えるべきところだろうが、グランアレグリアは未来の女傑として持て囃されていた面もあり、この結果には、多くのファンが不満を吐露し、落胆したことだろう。何しろ発走前までは、「一戦毎の良化度は大きく」、「良い気配」で「体調は更に良くなって」いた筈なのである。

この敗戦によって、少なくともこの世代においては、所詮牝馬は牝馬、牡馬には決して敵わぬわ、といった放言がより一層の幅を利かすことになった。

レーン騎手はまだ若い

人気を大きく裏切って10着以下に沈んだのが三頭。まずは四番人気から10着に敗れたグルーヴィットだ。前走で白旗を上げた絶対に勝てない馬は7着に陣取っており、そうなるとこの着順は無難なところだろう。そもそもが人気しすぎである。外国人騎手に夢を見すぎではないか。

武豊騎手は大人の対応

六番人気を背負ったファンタジストは、なんともお粗末な13着。中団のやや後ろで外から追い出すも、何が気に食わないのか馬は一向に前進気勢を見せなかった。ようやくハミを噛んだかと思いきや、今度は平成の天才騎手が追うのをやめるという敗北宣言が出たのだった。

JRAの公式動画より。画面左端がファンタジスト。騎手は追っていない。

恐らくは、故障を避けるべくレースを諦めたのだろう。調教師が言った「ピークに仕上げた皐月賞時と遜色ない状態で出せそう」とは、「いい走りを期待したい」との語尾も相まって、やはり希望的観測に過ぎなかった。馬は春先から使い詰め、それも、ステップレースとG1を二連続も走らされたのだ。天才騎手は、この位置でこの脚では上位が難しいと判断し、3歳馬の将来を見据えて、大事をとったものと思われる。

しかしその振る舞いが無ければ、馬は死んだが8着以内への入線はあり得ただろう。馬券ファンの総意は、それほど見当違いともいえまい。

一番驚いたのは現場にいた戸崎騎手に相違ない

最後に、五番人気ながら15着となったヴィッテルスバッハを紹介しておく。七枠15番ながら、後方で内に入ってロスなく回り、直線も最内で追い通したが、前が垂れてくることもなく、そのままゴールを迎えた。前走では「中山マイルのスローで終いあれだけの素晴らしい脚を使え」ていたのに、今回は全く炸裂せず。「どこまでやれるかだ」と息巻いていた関係者各位の落胆も一入だろう。末脚勝負に賭ける馬のほとんどが抱える謎めいた弱点、不発、が出てしまった状況である。2着馬と綺麗に明暗が分かれてしまった。

一番人気で5着。五番人気で15着。

NHKマイルカップは東京競馬場で開催されているが、今回出走することができた関東馬はたったの二頭であり、しかも、それぞれが人気より3倍以上大きい数字の着順で敗北するという憂き目にあった。美浦の総力を上げて巻き返さなければ、そのうちに東京、中山は中央競馬界の二軍球場、福島、新潟は三軍施設となり、大きいレースは全て関西開催、という事態にも発展しかねない。なんとか頑張ってもらいたい。


労働階級からの解放を志し、収入のアテもないのに突然脱サラ。後先考えないその姿勢に後悔しきり。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です