中央競馬のG1戦線は一息ついたが、南関東はまだまだ終わらない。2019年6月26日には、古馬の上半期ダート王決定戦、その名も帝王賞が大井競馬場で施行された。
ゴールドドリームとルメールが不在、でも
前走の勝者にして前年の覇者は出走を見合わせてしまったが、東京競馬場で逃げ切ったインティ(牡5)や、川崎記念で上位人気馬を蹴散らしたミツバ(牡7)、昨年末の東京大賞典で3歳ながら力強く差し切ったオメガパフューム(牡4)など、砂上のスターたちが顔をそろえた。他にも、ダートG1を二勝しているタマ無しの両頭、サウンドトゥルー(騸9)とノンコノユメ(騸7)や、二年前の川崎記念を制したオールブラッシュ(牡7)、三年前の東京大賞典の勝ち馬アポロケンタッキー(牡7)と、既に終わった感のあるかつてのスターたちが脇を固める。待ち受ける地方所属馬にとってはぐうの音も出ない程の好メンバーが出揃ってしまったのであった。
注目されるは逃げ馬の宿命、序盤から
一番人気に推されたインティが、14頭中の七枠11番と外めの枠を引き当ててしまっており、内枠の各馬から邪魔されることなく無事に逃げられるかどうかが最初の焦点となっていたが、発走後、前走時とは異なり楽々と前に行こうとするインティに並びかけてきたのは、内ではなく外、八枠13番の南関馬、シュテルングランツであった。

結局、出ムチを入れて猛然と追われ、果敢に先手を奪ったシュテルングランツの後ろに控えるかたちで、インティはレースを進めなければならなくなる。

一番人気馬の致命的な弱点
今までインティは、無事に逃げることができたレースでは全勝しているが、逃げられず番手に控えることとなったレースについては、四戦して二勝しか出来ていない。その二勝も条件戦でのものである。つまり今回、番手に控える選択をとった時点で、勝つ確率が100%から一気に50%、重賞戦線ということを鑑みれば、実に0%まで落ち込んだといって過言ではなかったのだ。
データは未来の現実にモノを言う。結局インティは、生粋の地方馬にも先着を許してしまい、馬券に絡めないどころか着外にまで惨敗することとなった。
注目の序盤ではひっそりと後ろから二頭目
勝ったのは、後方からの追い込みを選択したオメガパフュームであった。今年の初勝利がG1タイトルとなり、フェブラリーステークスで三番人気を裏切って10着に沈んだ汚名を返上した。鞍上は、またもや短期免許の騎手である。中央でG1を二勝した後、今度は船橋競馬預かりの身分で三勝目を上げることとなった。恐るべき力量と幸運を持った騎手だといえよう。
新星の予感
2着には4歳馬、一枠1番のチュウワウィザードが入った。最内枠から理想のポジションを綺麗に確保できたことは大きいが、最終コーナーでミツバの捲り駆けに屈することなく直線で力強く伸びてきて、あわや初戴冠なるかという見せ場まであり、ニューヒーローの誕生を予感させる走りであった。
出涸らし中性ヒーロー、存在感を示す
3着には地方所属となった八枠14番のノンコノユメが入線した。奇しくも、フェブラリーステークス当時に「偶数枠が理想」、「外めの枠なら」と言われていた要求が叶えられ、無事に結果へと結びつくこととなった。

やっぱり中央出身馬。でもね、
相も変わらず中央勢のワンツーとなり、3着についてもつい最近まで中央所属馬。大番狂わせのない平時的なレースとなったが、しかし、本走については川崎やかしわの両記念とは大きく異なる展開があった。そのことは付記しておきたい。
それは、道中で置いていかれる馬が一頭も居なかった、という事実である。下の画像でも明らかだ。

ここからゴールまではあと400mしかない。ダート2000mというなかなかにタフな距離設定で、最後の追い比べが始まるその瞬間、全馬が一塊でひしめき合っているのである。逃げ潰れることになる南関馬シュテルングランツも、まだ最内で2番手に粘っている。ここから誰が抜け出すのか、この静止画では皆目見当つかなかろう。
これまでのG1は、格差を見せ付けられるばかり
過去二回あった今年の地方交流G1では、この光景は見られなかった。いずれも3,4コーナー付近に辿り着く頃には試合終了状態の馬が何頭か出ていることが常であった。


今年の帝王賞は、素人目には全馬にチャンスがあるかのように映る好レースであった。勿論、レース内容そのものには大きな実力差がある。今回のレースは、あくまで実力の足りない逃げ馬が力尽き、1400~1600mの走破時計が13.5秒にまで落ち込んだことにより、後続馬が追いついて馬群がグッと詰まったために演出されたもので、決して実力拮抗の名勝負だったわけではない。
技の説得力、というパワーワード
しかし、観戦するファンとしてはパッと見の状況の方が大事であって、プロレス人気もその辺りに端を発する面があるのだろうが、とにかく、それっぽく見えていればそれで良いのである。満足だ。せめぎ合う14頭の実績馬、実力馬たちの頂上決戦、まさに上半期の帝王を決める一大イベントなのだから、実際はどうあれ、見た目にこそ迫力があるのが何よりも大切なのだ。
そういった面で、今年の帝王賞は素晴らしいレースであったといえる。また、お下がりとはいえ地方所属の馬が上位に食い込んだのも、盛り上げに一役買っていたかもしれない。賞金額の格差ゆえ、当面の実力差は解消されないだろうから、こういった転厩でお茶を濁してなんとか交流競走のお祭り具合を盛り上げていきたいところだ。そして、なるべくなら近い将来に、今日のセ・パ交流戦程度にまで実力差を縮めていただきたい。令和の間に実現できるだろうか。
