2020年5月30日、緊急事態宣言が明けてから初めての開催を迎えた東京競馬場。その第8R一般競走(ダ2100m/4歳上1勝クラス)で、かつて中央競馬無観客競馬史上初のメインレース(東)を制した男、柴田善臣騎手(53歳/東/フリー)が、遅すぎる雪解けの兆しを競馬ファンに知らしめるかの如く、またも勝利を果たした。柴田善騎手にとってこれが5月における3勝目であり、彼がひと月に3勝を挙げたのは、昨年12月以来のことである。
お手馬と快走、雪辱を果たさせた
コンビを組んだのは、デビューから全14回を数える出走歴のうち、実に12回も連続で柴田善騎手を鞍上に迎えているエコロドリーム(牡4/父ドリームジャーニー/岩戸厩舎)であった。持ち味も弱点もちょっとした癖も、何もかもを人馬お互いが手の内に入れている状態であり、納得の完勝となった。

エコロドリームの前走は、水が浮くほどの不良ダートを2400mも走らされた挙句、ハナ差の2着であった。

八枠ながら好スタートから内に入り、中山競馬場のカーブを6回も駆けたから泥っ跳ねに嫌気が差したか徐々に後退したが、最終コーナーでは外に持ち出してメンバー二番手の末脚で逃げ馬を追い詰めたのに、ついに届くことは無かったのであった。


今回は、今回こそは、雪辱の一戦となっていたのである。前走で散々な目に耐えた挙句に報われなかった馬の思いを、柴田善騎手は心から慮り、なんとか馬生で二度目の勝利を、と決意を新たにしていたのではないだろうか。
長距離戦は斤量と騎手
さて、前走の中山ダート2400mというコース条件は、砂場の競走ではかなりの長距離設定となっている。今回エコロドリームと柴田善騎手が勝利した東京ダート2100mも、東京競馬場のダートコースでは二番目に長い距離設定だ。
物の道理で考えれば、距離が長くなればなるほど、騎手と斤量の差が、レース状況に多大な影響を与えうることがわかる。
斤量については言わずもがな、他馬より重いものを背負って走る距離と時間は長ければ長い程、馬同士の仕事量(ジュール)の差は開いていくわけだから、重ハンデ馬への物理的負担は強くなっていく。そしてそれは精神面においても恐らくは同様ではないかとの推測が成り立つ。つまり、相性の悪い騎手を乗せている時間が長ければ長い程、相性の良い騎手を乗せている他馬と比してその馬への心理的悪影響の比率が増大していくことが、容易に想像できるのである。
今回は牡馬57kg、牝馬55kgの定量戦であり、斤量差はほぼない。新人や若手騎手の騎乗による減量はあるが、彼等はそのぶん騎手としての腕が他より劣ると判断されているわけで、乗せている馬にとっては、軽くなった物理的負担を心理面で相殺されている、という理屈が通りそうだ。
長距離戦において斤量に差がないとすると、残るは騎手についてだが、上述のように、柴田善騎手とエコロドリームのコンビは今回が13回目、それも13回連続の13回目の出走であった。そしてこの人馬は前走で悪条件の長距離戦を走りきり、タイム差なしの2着に入線していたのである。説得力増強のため、戯れに、今回出走した14頭の馬と鞍上のコンビ歴を確認してみると、以下のようになっていたのだった。
一枠馬–2回目
二枠馬–初コンビ
三枠3番馬–13回目
三枠4番馬–4回目
四枠5番馬–4回目
四枠6番馬–初コンビ
五枠7番馬–8回目
五枠8番馬–2回目
六枠9番馬–初コンビ
六枠10番馬–初コンビ
七枠11番馬–初コンビ
七枠12番馬–5回目
八枠13番馬–6回目
八枠14番馬–初コンビ
この情報だけで、今回エコロドリームと柴田善騎手が勝ち切ったのは当たり前の出来事だったように思えてくる。三番人気に留まっていたのが不思議なくらいであった。
目指せ、名古屋グランプリ!
ダート長距離マイスターというピーキーなお手馬と共に、相変わらず閑散とした競馬場を走り回って通算7勝目を挙げた柴田善騎手。夏競馬に向けて更なる活躍に期待だ。