飲酒運転の厳罰化にしろ、運行管理の監査強化にしろ、全て高速道路で人が亡くなってから行われているように思う。一般道じゃだめだ。やはり高速道路である。日本列島の大動脈で生じたショッキングな出来事は、さすがに波及が早いし、人々に与える影響もすごい。
あおり運転を罰する時代へ、しかし大変そうだ
昨今がぜん注目されているのは、あおり運転である。発端はさまざまだが、無用な蛇行や幅寄せ、追い抜いて前に入ってからの急停止など、凡そ人や物の移動とは無関係な運転行動を取ることで、他者に迷惑をかける。場合によっては窓を開けて大声で罵倒してくるなど、精神的な圧迫を強めてくることもある。あおり運転の幅は広い。そして、その広さ故に、明確な定義がない。するとそれはつまり、はっきりした罰則規定等が無いことに繋がる。
著名人にのしあがったあの男は、法律に明るかったのかもしれない
2017年に東名高速道路で、追い越し車線上に駐車してアスファルトに降り立つという、命がけのパフォーマンスを行い、結果的に尊い命を犠牲にしてしまったものの、一躍その筋のスターになった石橋被告。知恵が遅れていそうなその風貌も相俟って、連日ワイドショーを賑わせていた。まさに売れっ子キチガイである。 北九州の方から来た人だそうで、きっと地元では華丸大吉よりも人気があるに違いない。
さて、地裁で長めの懲役刑が言い渡されたものの、石橋くん即座に控訴した。当然であろう。 現行法で彼を裁くのは至難の業だ。地裁では危険運転致死傷を大きく解釈し、無理矢理に適用したが、明らかに誤審である。まずもって石橋は運転中に死者を出しているわけではないし、その無配慮なあおり運転が、直接的に後続車の追突を招いたわけでもない。あくまでも駐車禁止場所駐車が事故の間接的な要因であって、石橋の運転行動と交通事故被害の関係は非常に希薄だ。被害車両の周りで興奮した猿のような威嚇行動をとっていたようなので、精神的に衰弱させ、動けないように追い詰めていたということならば、ぎりぎり監禁あたりは通用するのではないだろうか。しかしそうであったとしても、直接の死因とはなりえない。あくまで後続車の前方不注意が事故原因である。かもしれない運転が足りんのだ。高速道路の右車線上でキチガイが車を停めて車外に出ているかもしれない、ということを常に念頭に置いていれば被害者は死なずに済んだのかもしれない。
いずれにせよ、石橋被告については完全にザ・ハングマンが必要な案件となっていて、再発防止を期しての法改正が待たれる。
ちなみに、石橋建設工業さんは群馬にもある。
それはそれとしてだ。
”ネットでデマ” 損害賠償求め提訴 東名高速 あおり運転死亡事故 福岡県(Yahoo!ニュース、テレビ西日本)
石橋建設工業株式会社、という事業者が福岡県にあって、社長は石橋さんというらしい。と、いうわけで、ここが石橋被告の実父もしくは親戚が経営する建設会社に違いない、石橋被告もここで働いていたに違いない、会社として従業員の社会教育が出来ていない、なんて酷い会社だ、という非常に短絡的なデマが流され、警察沙汰になったのが去年の夏である。
デマ投稿の11人、全員不起訴 東名あおり運転死亡事故(朝日新聞)
上述記事の通り、初犯であったり既に死んでいたりする関係で刑事事件とはならなかったが、不起訴処分に怒った石橋社長、「ぜったいに懲らしめてやる」と息巻いていて、あれから早半年。ようやっと民事訴訟に持ち込んだのである。勿論ただ時を過ごしていたのではなく、テレビ西日本によれば、半年の間に11人中3人とは無事に示談をし、裁判にかけるのは8人だけとのことだ。
死してなお爪痕が残る、それが5chか。
ここで気になるなのは、不起訴となった11人の中には死人が1人含まれていることである。示談が成立せずに訴えられてしまった8人だが、果たして死人は訴えられた側なのか、示談した側なのか。死人に口なし、遺族の頑張りや如何に。
日本経済新聞が正答を出してくれている。
虚偽書き込みで損賠提訴 東名あおり、被害の会社社長(日本経済新聞)
厳密にいえばテレビ西日本は誤報を伝えている。3人と示談した、という表現は適切ではない。この半年間で、石橋社長はたった1人と示談出来ただけなのである。3人のうち1人は死んでいて、もう1人は不起訴処分の直後に謝罪し、石橋社長はそれを受け容れている。朝日新聞が報じている。
東名あおり事故、デマ被害の社長に手紙 書き込み主から(朝日新聞、有料会員限定記事)
不起訴処分となった5日後の日付で執筆したという謝罪文。5日後というタイムラグをどう考えるかだが、被疑者が不起訴処分となりホッと胸を撫で下ろしていたところに、石橋社長のコメント内容が各種報道から飛び込んできて、やばい結構怒ってるぞ、と慌ててしたためた、といったところではないかと勘ぐりたくなる。刑事事件に出来なかった案件の民事事件となると、タカが知れてはいるが、念には念を、と弁護士先生の添削を受けた上でご送付申し上げたのだろう。
同じ石橋でも社長の石橋さんは悪人ではないと思う。
一方、石橋社長が立派なのは、不起訴処分への不服を申し立てる際、謝罪文の執筆者を訴えから早々に外していることである。つまり許したということであり、「謝ってくれればそれでいい」ということだ。風評被害を受け、一時は休業にまで追い込まれていたのに、なんとも情に厚く懐が深い対応である。
裏を返せば、今回110万円を請求される8人は、自分から謝罪に来なかったということである。怒らせた人に「謝れよ!」と言われてしまったら、もういくら謝っても効果は薄い。賠償問題に発展する。「お前は、俺が謝れと言うまで謝らなかったな」という厳然たる真実が、「つまりそもそも謝る気なんか無くて、俺に言われて仕方なく頭下げたんだろ」という卑怯かつ筋が通る理屈へと成長して、被告に重く圧し掛かってくるのである。
実際のところこの裁判に勝ち目ないよ
しかし、名誉毀損罪に問われていない8人から計880万円をブッコ抜くのは、たいそう難しいのではないかと思う。金額の根拠を明示できるのかどうか、そして、名誉を毀損していないことにされた8人とその上述の損害額について、相当因果関係を立証できるのかどうか。1人あたり10万円、計80万円程度の和解金が貰えれば御の字だろう。
当サイトを含め、ネットを使ってあることないことが言い放題の時代。こういう裁判は増えていくべきである。賠償金のやりとりでタンス預金がどんどん回っていき、経済も活性化するはずだ。本当に国民がタンスの中にお金を溜め込んでいるならばの話だが。