言わずと知れた日本中央競馬会の生き字引的乗り役、柴田善臣騎手(53歳/東/フリー)が、今年も初勝利を挙げた。一番人気馬に騎乗しての見事な差し切り勝ちは、相変わらず安定した実力を周囲にアピールするに足る好騎乗であった。

ハンデ戦、16頭の小回り、しかしそこは中山D12
2020年1月13日、中山競馬場のダート1200mで行われた第10Rの初春ステークスは、古馬の3勝クラス、つい最近まで1600万下と呼ばれていた準オープン格の特別競走で、ハンデ戦であった。柴田善騎手が手綱を取ったリュウノユキナ(牡5/父ヴァーミリアン/小野厩舎)は56kgの斤量を背負っており、数字だけ見るとパッとしないが、なんとこれがトップハンデであった。実力上位馬と見做されただけあり納得の一番人気ではあったが、その倍率は4.7もついており、こちらは数字から察する通りの頼りなさがあった。いわゆる、押し出された一番人気というやつで、ハンデ戦らしく馬券師の誰もが疑心暗鬼、何がどうなっても文句がないような混とんとしたオッズ体系となった。
押しも押されもせぬ、とは到底述べがたい一番人気と最重量を背負わされたリュウノユキナであったが、それはそれ、なんといっても騎手の実力が並の比ではなかった。また、中山D1200mという舞台は、奇しくも柴田善騎手がついこの前、昨年度の16勝目を挙げたコースと全く同じであり、長年慣れ親しんだ定番の短距離走路だ。当時は絶対的不利とされる最内枠をものともしない堅実な勝利であったが、今回は二枠4番である。16頭立てだから内側には変わりないが、最内よりは随分と余裕がある。
典型的ハイペースの前崩れ
レースは、序盤から中盤までかなり速いペースで馬群が進んでいたが、その帳尻合わせよろしく終盤ではスタミナ勝負となり、ゴール前の200mが最も遅い走破時計となった。具体的には、前半の600mを33.7秒で駆け抜けているところ、後半の同距離には37.2秒もかかっている有様である。
リュウノユキナは、序盤のダッシュについて行こうと追い立てる柴田善騎手の頑張りむなしく、中団での追走が精一杯であった。動じない肝っ玉を評価する向きもあろうが、少なくとも道中の追い加減からは、人気を裏切って敗退する様が容易に想像できた程である。

しかし、三、四角付近でペースが落ち着き始めると、飛ばしすぎて後退する面々をよそに、リュウノユキナは好位置につけてきた。その勢いを維持しつつも柴田善騎手は手綱を抑え、前方に余裕を空ける。小回り内枠ゆえの前詰まりを予防するためだ。さりげない仕事だがこれがうまく折り合って、理想的な状態が作り上げられた。

そして、直線へ出ると馬群が開いたところにすかさず柴田善騎手とリュウノユキナは首を突っ込んで体を押し入れ、あとは右前の馬を追い上げて追いついて差し切って、そこがゴールであった。
幸先は良さげだが、データには一抹の不安が・・・
新年始まって第二週目で無事に年内の初勝利を挙げた柴田善騎手。昨年の年間勝利度数は16に過ぎないとはいえ、一昨年、7勝に終わった状況は着実に脱しつつあるようだ。今年も前年同様に重賞の制覇、もしくは久しぶりのG1勝利を期待してみたい。
しかし、どうにも雲行きは怪しいようで、このまま昇り調子とは簡単に行かないのではとも思わせる。下表をご参照されたい。

最近四年間の成績表である。36→16→7と減ってしまった勝ち星の数が、昨年は16に回復していることに目が行くが、注目すべきは右から四番目、騎乗回数の欄である。なんと四年連続で減少の一途をたどっているのだ。588→475→352→288という歯止めの利かなさが空恐ろしい。毎年、前年の8割程度に騎乗数が減らされていくのである。前例に沿っていくとすると、今年は210~230回程度しかレースに出られない可能性が高くなるのだ。来年には騎乗機会が200回を割り込むことになる。
全勝すれば150勝はまだまだ堅いが、果たしてどうなるのか。いくら馬を操る実力があろうと、乗れないのであればそれまでである。再度の飛躍を迎えるためには、柴田善騎手サイドの営業努力こそがカギを握っているのかもしれない。