2019年3月16日から開催されている、ボートレース福岡の一般戦、「ほぼオールレディース!福岡J・アンクラス杯」。開催4日目の第2Rで、白石有美選手(B2/118期/20才)は58.5kgの体躯をカポックに収め、予定通り1号艇に乗り込み、無事に1コースからのスタートを決めた。結果は最下位だった。
栄光に向かって走る、隣の艇に合わせよう
スタートタイミングは綺麗なものであった。1、2、3号艇の内側勢が、ピッタリ並んで.09という好スタートを決めている。


まさに黒子。影の立役者現る、か
さて、このレースには白石有選手の同期、中北涼選手(B1/118期/26才)が出走している。しかも白石有選手のお隣、2号艇に乗り込んでいるのだ。真っ当に推測すれば、ここは白石有選手の水神祭を後押しするはずである。
1号艇を無事逃がすために2号艇で出来ることは、身を挺して外の4艇を妨害することに他ならない。これを見て欲しい。

写真は遠めで若干わかり辛いが、1号艇白石有選手が、ターンの為に舟を大きく曲げているのに対して、すぐ外の中北2号艇は、それほどハンドルを切っていない。さらに外の3、4号艇が既にハンドルを切っているのに、それと比較しても直進に近い角度となっているのだ。
これぞまさしく同期愛の壁である。2号艇中北選手は、白石有選手が無事に先行してターンを終えることが出来るように、わざと自分のターンを遅らせ、尚且つ後続艇には、外まくりか内指しかの判断を鈍らせようとしている。
結果的に後続艇は足踏みをすることとなり、白石有選手にとって、プロレーサーとして生後初となる、イン逃げ成功の瞬間が訪れたのだった。

歴史的瞬間が訪れる。向こう上面で白石有美は先頭!
いよいよこの時がやってきたのであった。苦節3年、同期にも後輩にも後塵を拝し、辛い思いばかりしてきたボートレーサー生活、それらの思い出を全て引き波に巻き込んで、女・白石は驀進する。

水を差すようだが、ここで白石有選手が留意しておくべきことは、もう真後ろには中北選手が居ないということである。1マークで壁になった2号艇だが、1号艇に合わせた鈍くさい回り足が仇となり、脱・福岡の七光り、A級レーサー大山千広選手(A1/116期/23才)の3号艇らに懐を突かれ、外に追いやられてしまった。これでは何もアシストすることが出来ない。
今年も既に1着は9本、同期のお姉さんこと中北選手が大奮闘

しかしここで、2号艇中北選手と、連対率26.6%程度のそのモーターは根性を見せる。並んだ3号艇大山選手に競り勝ったのだ。3号艇のモーターも29.2%程度の連対率しかないため、お互いにどっこいどっこい、決して優良機とはいえないが、B1選手がA1選手を追い込むという接線は観ていて楽しい。
ちなみに白石有選手1号艇のモーターは連対率が約37.5%で、本レースに出走した艇のなかで最高の実績を保持している。
さて、大山選手はたまらず減速し、2マーク手前で外に出さざるを得なくなったのだった。

こうして、中北選手は再び1号艇の逃げをサポートするべく、背後にぴたりと陣取ろうとしたのだが、まだ内側にもう一人、4号艇の柴田友和選手(B1/85期/41才)が控えている。地元福岡の中堅だ。しかしもう2マークが近づいており、2号艇の中北選手には、4号艇まで内に圧迫して競り落とすほどの余裕はなかった。
果たして、前を行く白石有選手は、その真後ろで繰り広げられていた激戦について、どこまで把握していたのだろうか。同期の中北選手が如何に頑張っていたのか、察することが出来ていたのだろうか。
いよいよ1周目第2ターンマークへ!

というのも、2マークの攻防が余りにもお粗末だったからである。まったりとした減速ぶりは、先頭であることに安心しきっている感すら漂う。

ターンマーク付近では、内々を走っていた4号艇が、意を決して攻めの旋回に出た。内から外へ向かってそのまま、ほとんど減速せずに切り込んでくるという、制動が利かなくなれば、そのままスタンドにぶつかってしまう危険すらある走法だ。
1号艇のすぐ右後ろ、2号艇中北選手は、4号艇の邪魔をしようにも、1号艇が先に回ってくれないと手が出せない位置にあり、ただその光景を見ていることしかできない。
そして当の1号艇はといえば、写真で上体が傾いていないことからも察せる通り、安全運転の大減速状態であった。

そうなると当然に1号艇は4号艇に捕まってしまう。ターン前で減速したため、ターンマーク近くをゆっくり締めて回れる状態となった1号艇だが、ほぼ真横から4号艇に攻め込まれる。
こうなってしまったら、一旦アクセルを緩め、4号艇を左から右へ、逆ムーディ勝山よろしく受け流していくしかない。そしてコントロール不能に陥り消波装置あたりに激突する4号艇を尻目に、小回りで安全に先頭、そのままホームストレッチへと帰ってくるのである。後は2号艇がなんとかしてくれる筈だ。


しかし、そんな芸当は幸薄い白石有選手には所詮不可能なことであった。四十の牡からのヒップアタックを思いっきり喰らって、あえなく先頭を譲ることとなる。

さらに、真っ白な巨体がバランスを崩した為に海は荒れ、同期の中北選手も巻き添えを喰らってしまった。頑張って裏仕事をこなしていたのにも関わらず、報われなかったばかりか、本当に酷い仕打ちを受けているのである。
二連単は一番人気、三連単でも1,770円しかついてない
柴田選手の4号艇は、1号艇にダンプするかたちとなって体勢を保ち、綺麗にターンしたが、がっつり内が空いたことで本命の大山選手に差し込まれ、結果的には2着止まり。終わってみれば、大山選手と柴田選手という、福岡支部のワンツー決着であった。
残念なのはもちろん白石有選手であったが、その着順は腑に落ちない。6着、最下位である。というのも、1週目2マークで写真の通り、白石有選手から恩を仇で返されるような大きな水しぶきを浴びた2号艇中北選手は、4着を確保しているのである。
4号艇のおっさんに暴行を受け、大きく飛ばされた純潔の乙女。その精神的ダメージは計り知れないものがあったのかもしれない。中北選手が必死に這い上がっているところ、放心状態でただただターンをこなし、いつものように前方にたくさんの舟を目にしながら、何も考えずに残り2周したのだろうと思われる。
選手によっては、ぶつけられた瞬間にハナちゃんよろしく真っ赤に燃え上がり、殺してやらんばかりの勢いで暴力的猛追を始める者もいるが、少なくとも今回の白石有選手はそうではなかった。乙女である。しおらしくはかない。
何はともあれ、まだまだ勝てる腕ではないということ。
しかし、58.5kgの選手が、男子とはいえ僅か50.5kgの選手に弾き飛ばされてはいかんと思うのだ。なんのための巨体だというのか。なるべく早くモンキーターンの姿勢を固め、旋回に挑んでいれば、恐らく横から襲われても、がっちり受け止めた挙句、引き波に沈めることができるだろう。結局は技術の差である。
まだシリーズは続く。明日は二回走り、2号艇と5号艇だ。気を落としたり投げやりになったりせず、前を向いて挑んで頂きたい。

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