2019年4月23日、ボートレース平和島で開催中のG3、平和島レディースカップにて、女子通算連敗記録の更新を続ける白石有美選手(20歳/163cm/118期/東京)が1号艇で出走し、3着となった。1号艇で初めて舟券に絡む快挙であり、G3での3着も自身初である。無論、勝ってしかるべき1号艇では、手放しで喜んでよいものでもない。
白熱のレースを、振り返ってみよう
前記事で取り上げた通り、スタートは見事そのものであった。

.04のトップスタートは文句なしだ。完璧である。ここからただ逃げればよい。
白石有選手のスタートについては予想通りだったものの、上掲記事で挙げたもうひとつの目論見は見事に外れた。3号艇と4号艇が、同支部同年齢同期という親密な関係にあること、そして3号艇には準優勝戦出場の目がなく、4号艇が準優出可否のボーダーライン上にいることから、3号艇は4号艇に道を譲るに違いないと踏んでいたのであった。しかし、まずもって3号艇もダッシュ、3カド戦となってしまうし、4号艇の方が出遅れてしまうし、外れるどころか、もう全くもってどっちらけのスタートであった。
それはいい。白石有選手には関係のない話だ。後続のことなど知ったことか。自分はただ、ただただひたすらに前を向いて逃げればよいのである。そして、最初のターンマークを迎える。
最大の見せ場到来、お見事!

当然だ。堂々たる逃げっぷりである。内を差してくる2号艇は届かないし、もちろん大外の6号艇もかなわない。単独先頭、抜け出し成功だ。さらに、後方では3号艇が転覆、4号艇と5号艇はその上を通るような危険な状態となり、大きく置いていかれることになった。特に準優出ボーダーで喘ぐ、必死も必死、血眼となっていただろう4号艇が大失速したともなれば、不謹慎ながら、白石有選手にとってはこれほど恵まれた展開もなかろう。
いよいよ、ようやくこの日が来たか。気温も20℃を超え、絶好の飛び込み日和。平和島の水質だけがちょっと気に食わないけれど、でも誰もが楽しめる水神祭は、もうすぐそこにあるのだ。
そう思っていたファンも、居たのではないか。何しろ上掲の写真である。ほぼほぼ間違いなく勝てる、はずだったが、今回も鬼門は次のターンマークであった。
決定的瞬間が、すぐに訪れた


上掲の画像は、2マークを控え、先に旋回するべく白石有選手が減速を始めた直後と、さらにその数瞬後を切り取ったものである。見た目では、既に外の6号艇、内の2号艇に追いつかれてしまった感があるが、いやいや、これは白石有選手が、我先にと旋回に入ろうとしているためであり、さして問題ではない。他の二艇も、ここから急失速、差は広がり直すはずだ。そうに違いない。

ところが、である。あれからさらに数瞬後には、上の通りとなってしまった。失速したのは白石有選手ばかりで、他の二艇は握って旋回。一息で白石有選手の前に出てしまったのである。

いやいや、まさかそんなことはあるまい。白石有選手は、小回りを選択したに過ぎないのだ。なぁに、握ってまくろうとした二艇は、そのまま制御が利かずに外へ流れていくに違いない。

ということも特に起こらず、やっぱり捲られて終わってしまった。トップは外の6号艇。二番手も真ん中の2号艇と、やはり一息で二艇に出し抜かれてしまったのだった。白石有選手の栄冠は、またもやお預け。連敗女王としての箔がつくばかりである。
黄門ちゃまだって反省会をする時代です
一体何がいけないのか。あれほど完璧な出足展開であったのに、どうして2マークでこうも簡単に、あっさりと敗れてしまうのか。やはりまだ体重差によるものなのか。痩せに痩せても如何ともしがたい、忌々しくも質量に対して均等に及ぶ、重力の悪戯なのか。確かに、1着の6号艇とは体重が11kg以上も違うし、2着の2号艇とも6kgの差がある。これは大きい。
とすると、今回の敗戦は、あくまで軽量選手が多い女子戦だったからこそ招かれた不幸だったというのか。もしこれが男子相手であれば、白石有選手の55.4kgという体重も、さして重すぎるとはいえない程度であるから、今回のような絶好の展開からの敗北など生じえないのか。
敗因の肝は、これだ
いや、そんなことはないだろう。今回の最大の敗因は、別のところにある。白石有選手は、そもそも、アクセルレバーを握ったまま曲がることが出来ないのだ。
白石有選手は、基本的に差し一辺倒の走りっぷりであった。ターンマーク手前で十分に減速し、方向転換の後に鋭く加速して、内側から前の艇へ切り込んでくる、そのやり方ばかりである。今節に限らず、過去に外枠から絶好のスタートを決め、絞りもせず、捲る気配すら見せず、そのまま直進し、ターンマーク付近で減速、方向転換の上でズバッと差そうとして、引き波をやり過ごせず最下位、というレースは、一度や二度ではなかった。
白石有選手は、捲りを怖がるというより何より、アクセルレバーを入れたまま曲がる、ということそのものが苦手に過ぎるのではないか。自動車でも、交差点の手前で減速せずに、アクセルでそのまま左折しようとすると、なかなかの遠心力がかかって、車種によってはヒヤッとしたりもする。恐らくはボートでも然り、ノーブレーキ旋回には、それなりのリスクがあるのだろう。
しかし白石有選手は、仮にもプロ、それも四年目である。ハタチになったばかりとはいえ、握ったまま回るの苦手でしててへへ、では済まされないのである。これを練習不足、いやもはや、はっきりと、怠慢といわずして、なんと表現すればよいものか。
1号艇での成績は6、6、5、5、ときて、3、という数字が入り、これだけ見れば、着実に仕留める日が近づいてるようだが、そんなことはない。今回だって後続の転覆が無ければ、ズルズルズルズルと下がっていく、5、6着での入線が現実的であった。1周目2マークのあの旋回は、それほどの状況を想起させるに十二分に足るほどだ。
迫る~、●●~、地獄の暮らし~
情けないことではあるが、全速旋回とまではいかずとも、少なくとも、現状よりは航行速度を維持したままでの旋回が可能となるようにならない限りは、自分以外の五艇全て失格、といった突発事変でも生じない限り、勝利の美酒を味わうことは不可能だろう。何しろターンは六回もあるのだ。いくらスタートでのリードがあっても、回る度に遅れていたのでは、今回のようにすぐに追いつかれ、追い抜かれ、涙を飲むのが関の山である。
ボートレーサーは、ある程度の成績を残せないと、事実上の引退勧告が与えられるが、白石有選手にも、そろそろ黄色信号が灯り、来期、つまり5月1日からは、延命のために出走数を減らす必要が出てくる。残り少ないボートレーサー人生、他艇のアクシデントを切に願う日々が始まる。
