2019年11月2日午後3時頃、東京、京都に続く三場目の開催地である福島競馬場において、単勝万馬券、のみならず三連単に至っては二百五十万弱馬券というなかなかの大荒れ決着が飛び出した。勝ったのは、柴田善臣騎手(53歳/東/フリー)を鞍上に迎えたリードザフィールド(牡5/大江原哲)で、単勝十一番人気であった。続く2.3着にも不人気馬が入り、三連単は実に千四百六十九番人気の大波乱だった。

柴田善騎手はこれで年間12勝となり、あと4つ勝てば一昨年に記録した年間16勝に到達することとなる。残り二ヶ月というと余裕がありそうだが、開催日数で換算すれば最早僅か16日間の猶予しかない。全日程で乗り鞍があるとは限らないことを鑑みれば、雲行きは少し怪しい。
福島芝2600mを経験した回数が違うということか
さて、勝ったリードザフィールドだが、またしても柴田善騎手は初騎乗であった。勝因は様々あるだろうが、中長距離の対応力が物を言ったのは間違いなかろう。福島芝2600mは、向こう正面からスタートしてコースを一周半することになるが、リードザフィールドと柴田善騎手の進路取りはベストといってよかった。道中は競り合いを避け、先団の後ろをストレスなく追走、虎視眈々といったところだ。それが三角から四角にかけて急変し、柴田善騎手は右鞭を乱発、


外に持ち出してから、その先団を直線でまとめて差し切ってみせた。結果的に十一番人気馬とは思えない程の堂々たるパフォーマンスが発揮されており、小回り福島の特性を活かした柴田善騎手の好騎乗が冴え渡っている。

もしや「先生!お願いします!」…勝つためのお膳立てがあるか
テン乗りでの勝利が続いている。柴田善騎手は、短期間で馬の特性を把握しその力を出し切っているわけで、まさに豊富な実績と経験に裏打ちされた職人芸が光っているのだ。振り返ってみると、今年挙げた12勝のうち、初騎乗初勝利となったのは今回のリードザフィールドの他にサンアップルトン、ストロベリームーン、サトノファイター、サニークラウド、アルカイクスマイル(新馬)と五頭もいる。
この実績から推し量れることは、柴田善騎手が高い騎乗技術を維持しているということの他に、「ここぞ!」という時、「これで決めてくれ!」と陣営が祈願するタイミングで、柴田善騎手に騎乗依頼が行われているのではないか、ということである。いくら騎手の腕が光ろうとも、実際のところ地に足をつけて走るのは馬なわけで、その体調によってレース結果が大きく左右されるのはいうまでもない。柴田善騎手が勝てたのは、もちろん馬がよく仕上がっていたからである。陣営は、柴田善騎手が乗るにあたって、勝つために最善を尽くした仕上げを行っている可能性が高いのだ。それはそのレースが陣営にとって、「勝負!」という局面にあったからに他ならないではないか。そして陣営は、絶対に落としたくないレースの鞍上に、あえて柴田善騎手を選んでいるのではないか。もはや年下の調教師も多い境遇下である。「先生、とっておきを用意致しましたので、お願いします」という状況下にあったっていいではないか。
実際のところは、そもそも柴田善騎手のお手馬自体が少ないため、テン乗りの騎乗依頼ばかりとなっているのだろうが、何しろ勝ち星の半数がテン乗りによるものともなれば、希望的観測で物事を語りたくもなる。
もし憶測通りであれば、柴田善騎手は全く、終わった騎手、ではないし、地方回りのロートルでもない。まだまだ頼みのベテランとしての存在感や地位を誇っているということだ。今後も王道競馬でターフとダートを沸かせて欲しい。
