春爛漫、桜満開の日本列島。その都で、元・最年少レーサーの生田波美音選手(19歳/B1/東京/124期)がまた勝った。伸び続ける身長と、比例するのが常である体重との折り合いに苦心しつつ、初優出に向けて剛炎の如く突っ走っている。
え? ニップル? ニッブル?
2022年4月1日。ボートレース多摩川では、G3級の「オールレディースリップルカップ」が開催初日を迎えていた。生田選手はその第1R、まさに幕開けの一戦に五号艇を任され、醜くも美しい女同士による熱戦の火ぶたが切られるのを待つこととなった。メンバーは下表の通りである。

内四艇に乗船する方々の平均年齢が実に50.25歳と、大変に恐れ入る事態となっている。うち二名はB級だが、SG出場経験者だったりG1勝利経験者だったりと、かつての女子レーサー界を牽引していた傑物揃いなのであった。外の二艇は、二人の年齢を単純に足しても40歳であり、実績経験を加味しようがしまいが色々と足元にも及ばない、蚊帳の外もいいところといった状況であった。

故にオッズは上掲の通り、1-2-4、1-4-2の折り返しを筆頭に、1-2-3、1-4-3、1-3-4等、A級ベテラン一号艇から、四号艇までで決まるだろうという判断が大筋を占めていた。1-4-5、1-2-5と、五号艇生田選手が絡む舟券で10倍台を付けたものもあるにはあったが、「せいぜい三着までなら、ありえるか」という程度の評価に留まっていたことは疑いようがない。何しろ1-5となると途端に倍率が跳ねあがり、最も安くても35倍を付けてしまうほどなのだ。5アタマとなると当然の如く全万舟である。
口開けから売り上げを逃す運営の心労たるや…
しかし、馬にしろ舟にしろ、何が起こるかわからないのが世の常であって、輝かしき開幕の一戦は、順風満帆とはいかず、高売上を期待した主催者を貶めて嘲笑うかの如き様相を呈してしまったのだった。

念のために記すが、上掲画像におけるスタートラインは、点々とはためく白い旗たちの部分ではない。その先、画像上では黒いポールとして下端だけ写り込んでいる部分から岸までに引かれているであろう、見えない一直線ラインである。このラインを越えて良いといわれるまで、あと0.2秒くらいは待たねばならないのだが、既に六号艇の舳先がラインへ到達せんとしていることが察せられる、というのが上掲画像だ。ぱっと見は絶好のスタートを切る瞬間を捉えた、とも思わせるが……。

やはり六号艇はフライング失格となった。追い風に煽られたのだろうが、初めて訪れたレース場でこのスタートとは、若さゆえの勇猛果敢、というよりは暴挙に近い。何しろ、酸いも甘いも経験豊富な50.25カルテットが軒並み.10以上の通常運転を選択しているのだ。生田選手は紙一重、後輩にやや遅れを取ったことが逆に功を奏してのロケットスタートとなった。一昨年の大晦日に念願の初勝利を達成したレース場であり、これが所謂「見えている」スタートなのか、それとも自分の判断に自信が無く、なんとなく外の艇に併せていった結果のラッキーストライクなのかは、今後のレースを見て行けば自ずと判明することだろう。

読み通りだったのか天運だったのか、何れにせよ、内の艇たちと0.1秒以上もスタートタイミングに差があるというこの絶好機を逃す生田選手ではない。早速にA級の四号艇の進路を塞ぎ、1マークでは残る三艇を豪快に捲り切り、勝利を収めた。

BOATRACE BBより。一周目1マーク。
三連単は5-4-2。返還艇が出たのにも関わらず、180倍の万舟券となった。早々に失速させた筈の四号艇が小回りから2着をもぎ取る辺り、流石はついこの間までA1級の座に居たA2級選手といったところである。
今節こそは、と思わせてからの……
三年前の大晦日に、プロレーサー人生における初勝利をここ、ボートレース多摩川で成し遂げた生田選手が、今度は初優出、そして優勝を目指して絶好の滑り出しを飾ることとなったのはなんとも縁の深さを感じさせる。今節こその期待感あふれる走りであったが、しかし、この日は二回走りで、その二走目は三号艇で3コース進入からスタートしたものの、定石に反する二号艇の2コース捲りを読めず、攻めあぐねてあっさりと上位争いから陥落、5着入線となっているから、順風満帆とはいかない。
それでも、二月中旬以降、ここまで四節連続で必ず勝利を収めており、キャリアハイであった2020年の年間10勝という数字も、まだ年の1/3も過ぎていないのに今回の勝利をもって塗り替えたのは、大変に充実した現実的事実である。なんらかの水神祭を迎えるのは時間の問題だろう。
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