柴田善臣騎手、最年長勝利記録を6日ほど更新。


前週に菊花賞候補馬を駆って、外国人騎手が手綱を取る本命馬を競り落とし、長い中央競馬の歴史において初めて58歳で勝利騎手となった柴田善臣氏(東/フリー)。しかし、歴史的快挙に酔いしれる間は数日しかなかった。クラシック最後の一冠を狙う青春まっしぐらの愛馬に触発されたか、その翌週には、これまた史上初の、2勝を挙げた58歳騎手へと生まれ変わったのである。

<JRAの公式動画より。決勝線>

夏の新潟は終わらない。

2024年8月24日。相も変わらず猛烈な暑さだが、それを話題にするには飽きが来る程度には、夏の新潟開催が円熟してきていた。前週もこの暑さをものともせずに、素質ある僚馬を三連勝目へと導いた柴田善騎手は、この日も四鞍の騎乗機会に恵まれ、そのうちの1つはメインレースという充実ぶりであった。

キャリアの浅い、夏の2歳。

勝ち鬨は早速、開幕戦、すなわち第1競走で上げられた。2歳の未勝利戦、カポレイラ(父アドマイヤマーズ/東・中館厩舎)という牝馬に跨ってのものであった。もちろんカポレイラにとっては初の勝ち星となる。柴田善騎手はこの牝馬の処女航海から共にしており、今走が同馬のデビュー二戦目であった。当時は14頭立て七番人気の5着と、数字だけ見るとそこそこの存在だが、その実は直線の短い福島競馬場であったにも関わらず鋭い末脚を見せつけての掲示板食い込みであり、初めてながらなかなかに感性のある走りを披露してくれていた。

その様は、暑さにやられた馬券師たちの脳裏にもしっかりと焼き付いていたようで、今走は二番人気に推される注目ぶりであった。

お爺ちゃんを背負った仔馬のかけっこ、始まる。

レースでは若駒らしい先行策。六枠発走でありながらインコースにすっと陣取ることも出来、さすがベテラン騎手の味といったところで、もしこれが芝1600mではなくダート1400mあたりであったなら、理想的な位置取りといえた。新潟芝1600mは長い直線をふんだんに走らされるワンターンのコースだが、それだけに後続馬の強襲が猛威を振るい得るので、ペースを乱されることなく運べるインの三、四番手とはいえ、馬券師達はちっとも安心できないのだった。

しかし、そこは2歳戦。バテたわけでもないのに全頭が左右へフラフラと揺れる撚れる。皆が皆を翻弄する格好となり、後続馬は末脚で襲うどころの騒ぎではないのだった。内側の前目でじっと構えていた柴田善騎手とカポレイラは、その子供盆踊り大会のような手合いに巻き込まれることなく、前で逃げていた馬数頭だけを相手にするだけで良かった為、かなりのアドバンテージを貰ったといえる。

しかし、前をゆく逃げ馬だって2歳なわけで、騎手が右鞭を打てば前へ進むより先に左へ撚れていくのだから、内々をついて突き抜けようと画策していた柴田善騎手は堪らない。それでも、咄嗟に鞭を持ち替え、一転、左鞭を乱発し、カポレイラの進路を右へと振り、結果的に逃げ馬二頭の間に割って入るかたちで、まとめて出し抜いて見せたのは流石である。

<上下四枚とも、パトロールビデオより。緑帽子を被っているのが柴田善騎手。ゴールまで残り600m付近>
<ゴールまで残り400mを切った辺り。最内へ進路を取る柴田善騎手とカポレイラだが…>
<あと200mでゴール板、というところで逃げる橙帽子の騎手が右打ちを打つと、馬が内へと撚れた為、柴田善騎手とカポレイラの前方が塞がってしまう>
<咄嗟に左手に鞭を持ち替え、敏感な牝馬の特性を存分に活かし、すぐに外へと進路を切り替える柴田善騎手>

騎手の進路取りについては上述および上掲の通り見事なものであったが、何より今回の勝利も馬の強烈な負けん気、勝負根性が齎したものであったことは疑いようがない。何しろ牡馬と元牡馬の間に首を突っ込み、ひるむどころか伸び脚が増したのである。カポレイラの今後は注目されて然るべきだろう。

三年ぶりの快挙、とは手放しで褒め辛い状況。。。

柴田善騎手の二週連続勝利は、2021年の8月以来である。土日連続での勝利が2023年11月に成されているので、それほど驚くべき事態ではないが、休暇を挟んで乗りに乗って乗れに乗れているのは間違いない。と纏めたいところであったが、しかし、この日のメインレースでは一番人気に推されながらなんと最下位に沈むという、競馬ファンを阿鼻叫喚の地獄に叩き落す惨い仕打ちを見舞ってくれたので、評価は難しい。それでも、道中の立ち回りとしては理想的な運びであったのに、最後の直線で急失速したことを専ら騎手の責任とするのは無理筋だろう。午後しか競馬を嗜まないライトなファン層の心証を悪くしたことは間違いないにせよ、楽しみなお手馬も増えてきたところで、この勢いで2021年以来の、二桁勝利ジョッキーの座に返り咲いて頂きたいところである。


労働階級からの解放を志し、収入のアテもないのに突然脱サラ。後先考えないその姿勢に後悔しきり。

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