出ました朝イチ一鞍入魂!柴田善臣騎手今年4勝目!


押しも押されもせぬ令和の最年長ジョッキー、柴田善臣氏(56歳/東/フリー)であるが、昨年の年間勝利度数に並ぶ勝ち星を今年は三月までに挙げたものの、四月は24回レースに顔を出して勝つことなく終わった。その間、重賞での3着入線やクラシック前哨戦での騎乗馬もあった等、決して氏の存在感が薄まったわけではないからスランプの匂い等微塵も感じ取れないが、やはり勝ってなんぼの世界であるだけに、物足りなさ香る晩春ではある。

GW、終わってからが年度の本番よ。

<JRAの公式動画より。ゼッケン8番のグレイスカリヨンと柴田善騎手がゴールする瞬間>

五月。久方ぶりのまともな黄金週間に沸く愚衆をよそに、競馬界は淡々と、しかしこれ見よがしの三場開催で、ヒモの緩んだ財布から一銭でも多くの馬券売り上げを記録するべく躍起になっていた。柴田善騎手はというと、さらに輪をかけて淡泊な日常を送った。即ち土曜に一鞍、日曜にも一鞍、と極めて低調な騎乗依頼に応じ、それぞれ人気程度の着順で馬をゴール板の向こう納め、やたらと赤日の多かった週末を粛々と過ごしていたのである。

そして五月も第二週。五月病という言葉を聞かなくなって久しいが、若ければ若い程に自然と気が滅入ってくるこの時季に、ここぞとばかり、文字通り老獪な腕を魅せる騎手がひと花咲かせた。

2023年5月14日。前日からの雨模様を引きずる東京競馬場にあって、そのダートは稍重発表であった。この日も柴田善騎手の出番は一鞍のみ。未成年に毛が生えたような女子供が禁を犯して騎乗停止になっていようが、他に騎手はごまんといるわけで、特に長老・柴田善騎手の乗り仕事が増えるわけでもなかった。

しかし、この一鞍がなんとも口開けの第一競走において用意されていたから、柴田善騎手の一日は始まって間もなく終わってしまうという味気なさ溢れる日曜日ではあった。逆手にとって考えれば、出社後最初の仕事を片付けたらもう帰れる、という慣らし保育も驚きの短時間勤務ということでもあり、やる気は一入であったものとも推察できる。

未だ乾いた馬場を知らぬ乙女の背に。

鞍の下を任されたのはグレイスカリヨン(牝3/父ドリームバレンチノ/東・堀内厩舎)。今年三月に重いダートでデビューし、またもや愚図ついた天気となった今回が二走目である。デビュー戦でも柴田善騎手が騎乗し、十六頭立て十番人気を6着と、不可思議な言い回しをもってすれば、堅実に期待を裏切って見せてくれたのだった。当時と同じ鞍上、同じ体重で迎えた本走は、同じダートでありながら馬場は少し回復、しかし距離は200m延びるという条件の変化があったが、前走の悪い馬場を、舟券師達の思惑を超えてよく頑張ったことが評価されたのか、十六頭立てのところ四番人気と、上位での支持を受けていた。

将来の女傑、爆誕か。

完璧なレース運びであった。逃げ先行が大幅に有利とされるダートレースにあって、直線の長い東京は比較的差しの利く馬場、つまり予め前に行っておいた方が得とは限らないコース形態にあるわけだが、グレイスカリヨンと柴田善騎手はその特性に構うことなく、王道の先行競馬。道中は四、五番手付近、最終コーナーでは三番手まで位置を押し上げ、直線に入ってからは暫く様子を見た後、柴田善騎手の鞭一振りで、ググッと鈍くも力強い音が聞こえたかのような勢いでグレイスカリヨンは進出を始め、前を行く騙馬を競り落とした。

<JRAの公式動画より。ゴールまで残り300m付近。画像右から三人目が柴田善騎手。右手を振り下ろし、鞭を入れた瞬間。ここからグレイスカリヨンがじっくりと伸びてくる>

柴田善騎手自身はその間、大きなアクションを取ることなく、余裕ある素振りで若い女に跨っていた。なるべく馬に迷惑をかけないという、氏の真骨頂たる振舞であった。ゴール入線の瞬間、というか直後にグッと手綱を握ったのは、素人目には謎めいた行動と写ったが、きっと何か人馬で必要な通信を行ったのだろうと思っておきたい。

とにもかくにも、デビュー二走目の牝馬が、沢山の牡馬に囲まれながらも堂々たる先行抜け出しの競馬で未勝利クラスを脱したことは素直に称賛したい。思い返してみれば、出走経験のある馬たちに囲まれながらの初出走を、しかも悪い馬場を走らされたのにも関わらずまともな順位で走り切った根性ある牝馬なのである。それが二走目で、馬場も良化したとなれば上位争いは確実であり、勝つことだって当然にあり得る話であった。これが四番人気に推されていたとはいえ単勝14.1倍というのは、かなりオイシイ馬券だったのだ。

記録を越えて記録を避けて

柴田善騎手は、この勝利をもって自身が持つ最年長勝利記録の更新と共に、年間勝利数のワースト記録タイを脱することに成功した。ワースト2位は2018年の、7勝である。まだ五月。このまま健康を害することなく乗り続けることが出来れば、十二分に届く数字だ。

しかし、ここまでの年間騎乗数は77回に過ぎす、このペースでは一年で200回も乗れないことを考えると、楽観視するのは視力が悪いともいえる。ちなみに7勝に終わった年は352回もレースに顔を出しており、その勝率0.020は、怪我のせいで3勝に終わった2022年の0.033を大きく下回る自身の勝率ワースト記録だ。

現在の勝率は0.051と、当時の不調からは隔世の感さえあるし、今年200回レースで乗ることが出来れば単純計算で10勝出来ることになるので、やはりファンの皆々様は、ある程度余裕をもって騎乗ぶりを眺めることができるのではないか、という見方もできる。

いずれにせよ、取らぬ狸では如何ともしようがないが、今後も要注目である。


労働階級からの解放を志し、収入のアテもないのに突然脱サラ。後先考えないその姿勢に後悔しきり。

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