玉詰まりについて


多くのパチンコ店でパーソナルシステムが普及している。腰痛持ちや脱臼癖のある人々を引退の瀬戸際から救い出した、まさに遊戯場界のジョーブ博士といったところの革命的なシステムである。導入開始後の反響は凄まじかったが、しかし反動も大きく、「ドル箱が無いから、出玉感がなくて、なんだか流行ってなさそうに見える」との意見から、積み箱制に戻す、というとんでもない愚行を犯す店舗も現れるほどであった。大勢はパーソナルシステム有利となっており、一つの機種に齧り付いていられず、すぐに台移動をしたがる飽きっぽい人から大変な好評を得ている。

玉詰まり、に新たな事象が

古より玉詰まりといえば、2つの事象を指していた。1つには盤面の中で、狭められた釘と機械油、埃などに、進軍を阻まれた銀色の戦士たちが形成する毒々しい葡萄の果実のことであった。また1つには、客は推し測ることしかできない台の向こう側にある、何か魔物が潜んでいそうな闇の世界でなんらかの事件が起き、大当たり中にも関わらず賞球分が一向に払い出されない事態のことであった。

パーソナルシステムの普及、常態化、そして経年劣化は、玉詰まり、という言葉に第三の事象を指し示す意味をも授けたのである。

それは、出玉を受け入れてくれない、という悲しい事象であった。

葡萄よりも、払出がないよりも、最も気付きにくい

大当たりを引き込み、上皿を圧迫した出玉たちは、下皿へわらわらと進出してくる。休み時間の小学生が校庭に飛び出していくような、希望に満ちた明るさを感じる。少子化が進んでいるとはいえ、まぁまぁの玉数、勢いだ。

乳が揺れる液晶を眺め、「さて、これで三連目だけど、どのくらい出てきたかな」と、ふとパーソナルシステムの持ち玉欄を確認すると、僅か「6個」と表示されているのである。

眼下が大変なことになっているのだった。下皿を通過した銀球たちは、確かにパーソナルシステムの受け皿に入っていった。そして、そこから、そこで、しかし、そこまでであった。受け皿から一向に球が流れていかない。球数をカウントしてくれるタワー型のところまで、届いてくれないのである。

ガシャガシャと受け皿を揺すると、数玉流れていき、持ち玉欄は「8個」になった。やった。

しかし、当たりは止まらない。受け皿は、白米が漏れ出しそうな弁当箱よろしくパンパンになってきている。店員を呼ぶ。連荘は続いている。

僕がパチンコ店に勤めたくない理由

エロ可愛い素晴らしい女性店員が駆けつけてくれた。黒タイツである。遊戯者に密着してパーソナルシステムをいじってくれる。なかなか大変な問題らしく、解決の糸口は見出されていないようだ。

音量が大きいと思ったのである。店員さんが頑張ってくれているのに、台の雑音が響くのは可哀想だ。音量を下げようとしたのである。出玉は溜まっていく。擦れる黒タイツから、若干の焦りが感じられる。そんな中で「たんたりらんらん」などをアホ面こいて流しているべきではないだろう。

右手でハンドルを持つ歴戦の紳士ならわかるだろうが、音量を操作するのは左手である。そして、遊戯者の左側には、エロ可愛い店員さんが、少しかがみ込むような按配で、パーソナルシステムの受け皿と格闘しているのである。そこを、邪魔にならないように、誤解されないように、絶対に触れないように音量操作ボタンまで左手を辿りつかさねばならないのである。お約束のごとく、間違って音量を上げてしまった。

泣き面に蜂とはこのことで、その瞬間に液晶画面では頭にパトランプを付けた米国の障碍者が登場してしまう。出てくれば当たりなので、してしまうという表現はメーカーの意図しないところであろうが、出てきてしまったのである。彼女の登場と共に楽曲は変わる。「パトRUN!たまRUN」は恐ろしい曲である。障碍的キチガイセンスの権化だ。♪ミーのバストはメガサイズ♪である。♪セクシータクシーギャラクシー♪だし、♪ラララランランパトランもうタマラン♪だ。大変なことをしてしまった。

黒タイツの店員さんは、少々お待ちください、と言ってインカムで誰かを呼んだ。和牛か銀シャリか霜降り明星のどれかに居そうな雰囲気の男性店員さんが来て、バトンタッチとなった。黒タイツのエロ可愛い、だけど今思えば少しばかりちょっとかなり厚化粧だった店員さんは、跡形も無く消えていた。

フッ、すり替えたのさ

いよいよもって下皿も上皿もパンパンである。パトランランがよりにもよってこのタイミングでMAXボーナスを持ってきたからで、男性店員さんは、ツッコミを忘れてしまった芸人のように、何食わぬ顔を装っているが機器を弄る手には相当な力がこもっている。とうとう受け皿ごと機械を引っこ抜く。そして、別の空き台からも同じパーツを引っこ抜き、交換、という荒業をやってのけた。もちろん、受け皿に詰まった出玉は全部移し変え、その時に落とした玉を必死に拾い、補充してくれる。

直った。直ったぞ。男性店員は「どうも、ありぁとっやしたー」というような漫才的な角度でお辞儀をして去っていった。なんと格好いいのだ。

ブラストドーザーもびっくりの臨場感

パーソナルシステムが抱えるこの問題は、上述した葡萄などのような、球の出ない玉詰まりではなく、球を出せない玉詰まりである、という点が特異である。もしあれが直らなければ、「と、とりあえずバケツを!」という話になっただろうし、間に合わなければ隣の台へどんどん玉がこぼれて行く。そしてもし、隣に私が座っていれば、それらは全て私の分になってしまうのである。

機械化が発展し、便利になればなるほど、メンテナンスの幅や種類も豊富で複雑になってしまう。皮肉であった。

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労働階級からの解放を志し、収入のアテもないのに突然脱サラ。後先考えないその姿勢に後悔しきり。

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