菊花賞に狂暴な愛馬と臨み残念無念の大惨敗を喫してしまった、中央競馬界最高齢騎手の柴田善臣氏(58歳/東/フリー)。初の右回り、初の都会的かつ大規模な観客数、初の四角二回通過、という処女膜三枚重ねに対し、3歳秋、人間でいえば大学一年生程度の思春期まっさかりボーイである愛馬は、持てる競走能力の全てを跳ね返され、一角から二角にかけて首位に躍り出て見せ場だけ作り失速していった。

馬はしくじったが人は良さそうだ。
とはいえ柴田善騎手の方は、療養から復帰以降、下表の通り殆どのレースで人気以上の着順に馬を導いており、非常に好調な状態である。

殆ど、と記したが、人気未満に負けてしまったのは実に、上述のG1と重賞一つだけである。平場、特別戦できっちりと渋い仕事をこなしているのだ。しかし、地上波放送でも取り上げられるような重賞で結果を出せていないからこそ、一般のライトな競馬ファンらに対して、古豪ここにあり、といったアピールが出来ていないわけで、結果、マスメディアへの露出も平行線であった。
突然の馬質向上。
だが、競馬関係者のお歴々にはしっかりと上掲の好騎乗が認められているらしく、11月に入って乗鞍の状況が一変したのだった。
2024年11月2日、晩秋の福島競馬が開幕した。この日に用意された柴田善騎手の乗り馬はなんと六つ。一つの競馬場で一日に開催されるレースの半数に柴田善騎手が参加するのは、実に3月31日の七鞍以来である。しかも、その馬質が凄い。一番人気が三鞍、三番人気が一鞍と、全盛期を彷彿とさせる充実ぶりなのであった。
蓋を開けてガッカリ。
最近の好調ぶりと併せて鑑みれば、これは三鞍全てで勝ち鬨が上がるか、と馬券師の多くが覚悟したのではないかと思われるが、しかし、結果は芳しくなかった。第一競走で跨った三番人気馬こそ人気通りの3着入線とするも、続く第二競走で手綱を握った一頭目の一番人気馬は先行から失速し9着。テン乗り、単勝3.5倍、とそこまで圧倒的な支持が無かったとはいえ、一番人気馬の所業としては受け容れがたかろう。次の乗り鞍は長い長い昼休憩を挟んで、第八競走、二頭目の一番人気馬で、こちらは勝手知ったる乗り慣れた3歳牡馬であったが、これも7着と掲示板すら外してしまった。単勝人気2.1倍を背負ってこの結果では、怒号や罵声を浴びせられても仕方があるまい。
そして続く第九競走が、三頭目の一番人気馬、ディマイザキッド(牡3歳/父ディーマジェスティ/東・清水英厩舎)で、初めて柴田善騎手を鞍上に迎えての一戦であった。同馬は5月のダービートライアルで二番人気を大きく裏切って10着となり、失意の休養を挟んでの復帰戦となっていた。トライアルに挑むまでは五戦して一度も掲示板を外しておらず、安定して高い能力を発揮していたと思われていたが、10着という結果は夢を絶つのに充分な説得力と重さ、悲しみが伴った。地獄のような猛暑でもって滝のような汗で全てを洗い流して心機一転、ディマイザキッドの新生、出直しのレースが、この福島競馬第九競走、芝2000mで争われる三春駒特別なのである。特別戦だがそこはローカル馬場、階級としては3歳上1勝クラスに過ぎず、かつてクラシックの戴冠を望んだ程の大器には小さすぎる目標といえ、単勝2.6倍という評価は妥当であった。
レースでは後方を進み、三、四角を馬群の外から格の違う速度で捲ってきて、そのまま直線で突き抜けての楽勝となった。柴田善騎手はゴール板の十数m手前で既に片手運転、ゴーグル前方の泥除けを払う等の余裕を見せている。
一番人気勝率が低いなぁ。。。
三度目の正直とはよくいわれるが、ここでも掲示板、いや馬券圏内を外すようなことがあれば、いよいよ辞めろ辞めろのシュプレヒコールとなってもおかしくない事態であっただけに、氏のファンは内心胸を撫でおろしていたことは疑いようがない。一番人気を三回飛ばすことはよくあるとしても、騎乗機会三連続でのものとなれば、強烈な悪印象がつくことだろう。
いずれにせよ、柴田善騎手による今年の8勝目は久しぶりの一番人気1着となった。今年における氏の一番人気勝率は20%である。こう書くとかなり低調で信用がおけない状態だが、連対率は50%。複勝率まで広げると60%あるから、漣軸とするにはそこまで悲観的な状況ではない。今日のような、人気騎手の乗鞍、といった状況が今後訪れるのかどうか定かではないが、まずは年内二桁勝利に届くかどうか、注目だ。
1件のコメント